ドリーム小説






恋というには幼いそれは 12













「え、あれ?仁王君、部活は?」


ずんずんとの手を掴んだまま遠慮なく進んでいく仁王。

足の歩幅が違うから、ついていくのがなかなか難しくて。

「仁王、くんっ!」

かすかに息をあげながら、があわてた声を出した。

それにようやっとぴたり、仁王は足を止めて。


「・・・部活はもう終わりじゃき。」


先ほどのの言葉への返事だ。

その声はどことなく弱々しくて。


「仁王君、」


その様子がなんだかいたたまれなくて、何度も名前を呼ぶ。


「・・・


小さな沈黙の後、そっと呼ばれる名前。

仁王をみれば、まっすぐな視線が揺れて見えて。


「・・・日吉とどういう関係なんじゃ?」


ふよふよと泳ぐ目。

とても話しずらそうに問われること。


「・・・へ?」


そんなことを聞かれるとは思っていなくて、思わず出た間抜けな返事。


「日吉のこと、下の名前でよんどっちゃろ?」

「・・・わか幼なじみなんよ。」


どことなく、ぶすくれたようなその表情がなんだかかわいくて。

そっと告げる事実。

若は幼なじみ。

生まれたときから一緒で、小学校2年から中学2年まで親の転勤で関西に行っていたにもかかわらず、小さな頃と変わりなくを迎え入れてくれた。

不器用で大事な幼なじみ。


「おさな、なじみ・・・?」


の発言にかすかに目を開いて、きょとんと声をこぼす仁王。


「うん。幼なじみやで。」

「・・・前メールしとった?」

「うん。あのときのメールの相手。」


「・・・はぁぁぁぁ・・・っ」


突然まるで力が抜けたかのようにその場にしゃがみこむ仁王。


「わ、どないしたんっ!?」


腕を捕まれたままだったから、そのままも同じようにしゃがみこむ。


「別に・・・。」


視線を合わせようとするが、見事なまでにあわせようとしない。


「だ、大丈夫??」


しゃがみこんで、そのまま顔をひざに付けてこちらをちらりともみようとしない。

さすがのもどう対処すればいいのか、分からなくなって、おろおろとするが、残念ながら解決策は見つからなくて。


「っ、私誰か呼んでくるっ!!」


よく分からない仁王に、対処しきれない自分に、誰かの手を借りようと学校へと足を向ける。

そして賭だそうとしたとき、ぐい、と掴まれたままの腕が再び引かれて。


「う、あ、」


そのまま重力に従うようにしゃがみこむ仁王の腕の仲へと引き込まれて。

ふわり、温もりが背中から広がる。

じわり、顔に熱が上がる。

広がる熱。

体中が、まるで心臓になったみたいで。


「に、お、っ」

ぶわり、


上がる熱に、耐えられなくなって声を上げれば、ぐっ、と前に回された腕が強くなる。


「っ、」


「いかんとって」


「っ、え」


「ここに、おったらええ。」


「っ、で、も、しんどいんやったらっ」


「別にしんどうない。」


「っ、けど、」


「ええから、ここにおりんしゃい」


後ろから、耳元で、低い声が直に、響いて、


ぶわり

熱が、


怖いくらい、あがって。


「に、お、くっ」

「どやった?」


その体勢を気にする様子もなく、仁王は次の言葉を紡ぐ。


「っ、」

「今日の試合、どやった?」

「・・・っ、ずるいくらいに、かっこよかった。」


思ったことをそのまま、言葉に乗せて紡ぐ。

体中に感じる熱にのぼせそうになりながら、言葉を続ける。


「男のくせにずるい。きれいとか、ずるいし。」


ぐっ、と腕が強くなり、さらに体中に熱が、広がった。






「好いとうよ」






ふわり、耳に深く深く、しみこむように。



じわりじわり、



頭が理解をするのが遅くて、理解が、追いつけなくて。





「好いとうよ」





再び繰り返される言葉。


じわりじわり


ようやっと脳まで浸透したその言葉。


理解した瞬間、ぶわり、今まで以上に体が熱い。


「きいちょるん?」


何も答えないに確かめるように、そっと言葉を投げかける。

温もりが近くて、信じられない謎の感情ばかりが広がって。


「俺んこと、どうおもっちょるん?」


ぱくぱくと、顔を赤くして、言葉を探すをせかすかのようにさらに連なる言葉。


「答えてくれんにゃったら、肯定とみなすき。」


くつり、耳元での小さなつぶやき。

それに答えることもできない




「好いとうよ」




はよう返事よこしんしゃい

俺んこと、どないおもっとん

まあ、答えは一つしか、認めんがの。




続けられる言葉は、ただただ、の胸に深く沈みこむ。





「なあ、、お前のこと、好いとうよ。」





とどめとばかりに告げられた言葉。












に残された選択肢は一つしかなかった。


















恋というには幼いそれは
12話お付き合いありがとうございました。
ただ仁王君に告白してほしかっただけのお話でした。


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