ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 
















「お嬢おはようさん」

遅い時間に呼び出しとかされたせいで、いつもより遅い時間まで睡眠をとってしまった。
呼びかけられた気がして目を開ければ、そこにあったのは天井__ではなく、最近見慣れてきたレイヴンさんの顔だった。
この至近距離で見てもやっぱり思うんだけど、格好いいな。

「ん?寝ぼけてる?」

なんでここにいるの、とかいろいろ聞きたいことはあったけれど、それよりも先に確認したいことが、あった。
ゆっくりと手を伸ばしてその後頭部に手をやって。

「っ、」

髪を結わえてある髪紐をほどく。
そうすれば、レイヴンさんはあわてたように片手で髪を押さえて。
ぱさり、軽く落ちてきた髪が、レイヴンさんの表情を半分ほど隠す。

その顔は、今まで見たことのない程、冷たい色を宿していた。

「お嬢、なにするのさ」

色は一瞬で消え去り、困った子供に向ける穏やかな表情に。
それにつられるように、へらりと笑ってみせる。

「女性の部屋に入り込んだ代償には安いくらいじゃないですかぁ?」

ゆっくりと私の上から起きあがったレイヴンは手早くその髪をまとめていく。

「まだお休み中のお嬢をおこしにきたおっさんを誉めてほしいくらいなのに?」

にこにこと、互いに浮かべる笑顔はどこか空々しく部屋に落ちた。





ぐっすり眠っていた間に、黒髪、基ユーリたちはノードポリカに行く方法を手に入れて__配達ギルドでもお世話になっている”幸福の市場”と協力関係を結んでいたのだ__私も一緒にその船に乗せてもらうことに成功した。

魚人のなかから現れた海賊ハットの女の子、パティが傷ついた艘舵手の代わりに船を動かしていたとき、それは起こった。
深く立ちこめる霧、突然近づいてきた大きな船体、そして止まったこちらの船。

隣接したその船から降ろされるタラップ。
ギギ、と軋んだ音を立てたそれに、モルディオさんが、カロル君が、小さく悲鳴を上げる。
とか言ってる私も平常心ではいられるわけもなく。
側にいたレイヴンさんの紫装束をがっしりと掴んだ。

幽霊だとか、お化けだとか、いない証明がされない物など、大嫌いだ。

楽しそうなユーリさん、ジュディスさんにラピード。
あと誰を連れていくか、そんな会話が交わされる。
全力拒否を申し出ているモルディオさんとカロル君。
エステルさんも乗り気ではなさそうで。
そうなると、残る人員は__

「おっ、俺様ご指名かよ・・・・・・」

レイヴンさんになるわけで。

「と、いうことでお嬢、ちょっと行ってくるわ」

未だに私の手はレイヴンさんを掴んだまま。
見下ろしてくる顔が苦笑しているのがわかる。
いってらっしゃい、そういって見送ればいいだけ、なのに。
いいだけだと、わかっているのに。

「ユーリ、さん」

レイヴンさんの袖を掴んだまま、ユーリさんに視線を向ける。
どうした、と返される視線に応えた声は酷く震えて不格好だ。

「私も、連れて行って、くれません?」

へらり、笑って見せたけれど、きっとその笑顔はひどく歪なのだろう。
ユーリさんはまん丸に瞳を見開いて。
ジュディスさんもあらあらと首を傾ける。
船に残る組のモルディオさんたちは何言ってんのよ!と声を上げる。

レイヴンさんも、不思議そうに目を瞬かせていて。

「でも、お嬢お化けとか、嫌いでしょ?」

こんなに震えているのだ。
怖いとばれていないわけがない。
正直、行きたくないし、行かなくていいならば船室にでもこもっていたい。
だけど__この船は、私が始めていく場所。
私が、見たことのない、場所だ。
幽霊だとか、お化けだとか、そういうものは大嫌い。
でも、それよりも何よりも__

「捜しているものが、ここにないとは、限らない、から」

お願い連れて行ってください。


私の言葉に仕方がないなとレイヴンさんが頷いてくれた。





配達ギルドと幽霊船












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