ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 






先日はさんざんな目にあった。
でもモルディオさんに頼まれていた稀少本を届けたところ、大変喜んでもらって、いつもよりも色を付けてお支払いをしていただいたので、まあ良いことにしておこうと思う。
願わくば、あの黒髪達にもう二度と会うことのないよう__


「うわー、魔物だー・・・・・・」

我がギルドにはとても優秀な魔導士がいる。
その彼が作る魔導具は、ほかのギルドには真似のできないほどに精巧で高度だ。
たとえば、遠くにいる人物と会話を可能にする魔導具
これにより、別のギルド員が探している届け物を探し出してくれたりするのだ。
相手が同じ道具をもっていないといけないため、ギルド員にしか普及はしていない。
たとえば、砂漠だろうと氷の上だろうと快適に届けられるように体感温度を一定に保つ魔導具
暑い砂漠だろうと、冷えた夜の砂漠だろうと同じ服で動けるため、荷物がとてつもなく減るのだ。
ただし他に人がいたらとてつもなく異質な目で見られるのでそれは覚悟しなければいけない
たとえば、質量、重力を軽減させる鞄。
重たい荷物も両手で抱えるほどの大きさの届け物も、あら不思議。一つの鞄に収まってしまうのだ。
以前間違ってこの鞄に入ったギルド員の行方は今もわかってはいない
たとえば、魔物を退ける魔導具。
一言で言えば持ち歩きの結界魔導器だ。
ただし範囲は人間約二人分。
魔物に近づかれない、というか、魔物に認識されにくくなるだけなので、物理的にぶつかったりしたら一発アウトだったりする。

とまあ、非常に便利な魔導具たちだけれども、やっぱり魔物に遭遇することはもちろんある。
現に、今、目の前に、一頭の魔物がいるのだ。
とてつもなく鋭い角をもった。
気づかれているか、いないか、で言ったら五分五分。
目が合ってる気はするけれど、敵対感情はあまり向けられていない。

さて、真面目に、どうしようか。
後ろを向いて逃げたいのはやまやまだが、後ろを向いた瞬間に襲われたらたまらない。

そもそも、この場所を通らないと目的の場所に行けない、という訳でもないのだ。
ただたんに、ちょっとたまには道を変えてみようかなぁ、と思っただけで。
まさかこの場所にいるはずもない強い魔物に遭遇するとは。
知っていればいつもと同じ道を素直に歩いていたというのに。

「いた!!リブガロだ!!」

見つめ合いながら考えていれば、聞こえてきた声。
元気いっぱいなそれは、なんだかひどく聞き覚えのある物のように思えて。

ゆっくりと振り返れば、そこにあったのは予想と違わず。
黒髪に桃色に子供。
さらにいえば、我がギルドの常連のモルディオさんまでいるわけで。

これはまた、今頼まれている本を見つけたら届けるの大変そうだなぁ、だなんてことをぼおっと考えていたからだろう。
後ろからの威圧感。
あ、そうだった、魔物と見つめ合っていたのだ。
何の気なしに目を離したら、そりゃ襲われるか。

「蒼破刃!!」

ふわり、私の横を通ったのはなんだったのか。
それを放ったのは、黒髪で。
黒髪はそのまま私と魔物の間に入ってくれて。

「ほら、さっさと行け」

後ろ手にひらひらと手を振ってくれたので、お言葉に甘えて逃げることにする。

「もし配達ギルド、黒猫の足を利用するときは、サービスしますねー!」

「はいはい、そのときはよろしく頼む」

強そうな魔物だったけれど、何となく、彼らならば大丈夫だろう。







配達ギルドと魔物





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