ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 














彼らは、これから空に現れた星喰み、というものを倒しに行く手段を捜すのだと言った。
きっと行ったことのない場所に行くと、共に来るか、と聞いてくれたけれど、首を横に振る。
リタが見つけだすとそういってくれたから。
焦って捜すのは、やめることにした。

__何より、彼らの邪魔をしたくはないから

ダングレストで一泊してから向かう、との言葉通り、彼らはダングレストの宿屋をとっていて。
レイヴンだけは、ユニオンの自分の部屋に戻っているらしい。
訪れた私に困った表情を浮かべた彼を気にすることなく、部屋に入り込む。
そうすれば、彼はため息を一つつきながら紅茶をいれてくれて。
シャワーを浴びた後なのか、降ろされた髪が妙に色っぽい。

「遅い時間に男の部屋に訪れるもんじゃないわよ、ちゃん」
「好きな人のところにならば、時間なんて関係なく会いに行きたいもんですよぅ」

へらり、笑ってみせれば、彼はため息。
困っている、というよりも、私の真意をはかりかねている、というのが一番正しいか。

「私に、この世界で空っぽでいようとした私に、心を、感情を与えたんだから、レイヴンは覚悟してくださいねぇ」
「あらら、吹っ切れちゃったのね・・・・・・」

吹っ切れた、というか、受け入れた、が近いかな。
にっこりと笑いながら、がさがさと鞄を探る
目当ての物は一番奥、だ。

「ねえ、レイヴン」

私の問いかけに、彼はなぁに、と首を傾けて。
その姿はシュヴァーンでであり、同時にレイヴンで。

「アレクセイさんに、言われたんですよねぇ、私」

視線で先を促されたので、そのまま言葉を続ける。

「”おまえは、この世界では異質なおまえは、この世界と運命を共にする必要は、ない”って」

何もないままついて行った訳じゃない。

「だからこそ、いずれ絶対に元の世界に帰してやる、って」

あの言葉があったからこそ、私はアレクセイさんの手を取ることに躊躇はなかったんだ。

「__昔、10年ほど前から、あの人の目指すところは何一つ変わらないんです。ただ、方法が変わっただけで」

かつての理想は今と変わらず。
ただ、過程が変わっただけ。
罪を、罪として認識しているあの人は、あの頃と変わることはなく。

「あの人について行く人が居るのも、あのときと同じ」

がさり、ようやく目的の物に手が届いた。
ゆっくりと袋から出して、まっすぐに、レイヴンへ__否

「そうですよね、ダミュロンさん」

ダミュロンへ。

私の差し出した手紙に目を瞬かせた彼は、ゆっくりと私の顔を見て。

「帝都に追い出した息子に、もし渡せたら渡してほしい、って10年ほど前に預かったまんまだったんですけどねぇ」

どこにもいないと思っていた。
もう届くことのない手紙だと。
けれど、捨てることもできなくて。

「私が一番はじめに任された依頼で、はじめて果たせなかった仕事なんですよ」

ゆっくりとその手紙を手に取ろうとしたレイヴン。
それをかわすように、手紙を引き上げた。
どうして、という表情を浮かべたレイヴンに、へらり、笑う。

「全部、終わったら、渡します」

星喰み、という何かを倒すのだと、彼らは言った。
これから、また、続けて動き回るのだと、聞いた。

だからこそ、今、ではなくて。

「レイヴンさん、約束を、ください」

私と一緒に、どうやっていきていけばいいか、一緒に捜してくれるというならば。

「私のところに、もう一度、現れてくれるって」

どうか、いなくならないで。
私のところじゃなくて良い。
あなたほどのすてきな人、私なんかじゃ釣り合わないのは重々承知している。

__いつか消える私を、選んでほしいだなんて、いえるわけがないから。


でも、優しいあなたは、約束をしたならば、かなえるために戻ってきてくれるでしょう?


「約束、してくれますよね?」


私の言葉に、彼は困ったように笑って、けれど、ゆっくりと膝をついた。

ちゃん、俺とも一つ約束してくれる?」

すっと自然な動作で手をとられて。
まるでお姫さまに忠誠を誓う騎士のような体勢で。
まっすぐと、その瞳に射抜かれた。


「__元の世界に帰ったら、俺のことを忘れて生きると」



それがどういう意味の言葉だったのか。
私は問いかけることができなかった。







配達ギルドと約束を交わす夜












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