ドリーム小説
配達ギルドとその後の話
レイヴンと一緒に暮らしだして、ユーリたちが我が家に入り浸るようになって、早一月。
家でわちゃわちゃしていたユーリたちをおいて、レイヴンに酒場に行こうと誘われたたのはつい先ほど。
彼行きつけの酒場で美味しいお酒を、ご飯を、楽しんで食べていた、のだけれど…
なんだか目の前がおもしろいことになっている。
「久しぶり!レイヴン!最近遊んでくれなくて、寂しかったんだけど?」
「久しぶり〜ライアちゃん〜ごめんねぇ、おっさん忙しくて」
あの、大丈夫ですか?その、スカート、短すぎません??
あと胸元苦しくないですか?今にもはちきれそうなんですが?!
セミロングの髪を器用に結い上げたお姉さんが右側からレイヴンに抱きつきながら声をかける。
「ねえこの後一緒に飲みましょう?」
「なーんてすてきなお誘い!でもごめん、リースちゃん!このあと用事があるんだよねぇ」
露出は控えめだけれども、服に収まりきっていない感じのする胸元。
それでいて、あの、スリットが、やばいんですけれど、それ、見えちゃいません?!
ロングの髪を片側だけおろして、艶やかにレイヴンの左側にしなだれかかるお姉さん。
思わず自分の胸元を見下ろした。
いやぁ、えぐれてはいないけれど、絶壁のように凹凸はないな。
もう一度お姉さんたちに目をやる。
__立派なものをお持ちで・・・・・・
私の視線に気がついたのか、お姉さん二人が、ゆっくりといままで視線すら向けなかった私を、みた。
うわ、正面から見たらさらに美人さんだ。
ジュディスとはまた違った魅力ですね!
「ね、レイヴン、これ、だれ?」
セミロングのお姉さんがじろり、無遠慮に私を見てレイヴンにきいた。
あ、なんかその視線どきどきしちゃう。
いけない扉を開かれたらどうしよう。
「あなたの次のお相手にしては、その、少々・・・・・・趣味変わった?」
ロングのお姉さんが悩ましげに息を吐いていった。
あの、お相手って何ですか?
いや、やっぱり聞きたくないかも・・・・・・というか、お姉さんめちゃくちゃオブラートに包んでくれましたけど、めっちゃ視線私の胸元!!
切ない!!
そうだよね、レイヴンの趣味はぼんできゅでぼんな、お姉さんたちみたいな人ですもんね!!知ってた!!
どうやったら大きくなるか教えてほしいっていったら教えてくれたりしないかなぁ。
両側からのお姉さんたちの問いかけに、へらり、とレイヴンはどこかうれしそうに__とろけそうに、笑った。
「この子はね、大事な大事な、俺の大切な旅の仲間」
じわりと、言葉が胸にしみていく。
ほっこり、胸に熱が灯る。
うれしいという感情がわき上がって、体中があつくなる。
__大事な大事な、俺の大切な旅の仲間__
だって、それは、この人にとって、レイヴンにとって、かけがえのないポジション。
へにゃりと、頬がゆるむのも仕方がない。
「へぇ―」
胡乱そうな視線を向けられるけれど、にまにまと笑う自分を抑えられない。
だめだ、なんかすごい目で見られている。
でもうれしくて感情が抑えられない__お酒が入ってるからよけいに。
__よし、ここは退散しよう。
「…ねぇ、私達レイヴンと飲みたいんだけど?」
お姉さんが私に向かって言葉を放つ。
もう一人も私の出方をうかがうようにみてきて。
ゆるむ頬を押さえてゆっくりと立ち上がった。
「私、先に戻ってるから、レイヴンは飲み続けていいよ〜」
「ちょっとちょっと、ちゃん?!」
お姉さんたちにもへにゃり笑って。
「私のことはおかまいなく!レイヴンから嬉しい言葉聞けたので、私満足です!席開けますんで、飲んでいってください!レイヴンに幸せな時間をあげてくださいねぇ」
私の言葉にあっけにとられた表情をするレイヴンにひらり、手を振って。
「おねえさーん!このテーブルに新しいお酒2つお願いしまぁす!」
店員のお姉さんにお酒を二つ頼んで店の出口へと向かう。
「じゃあレイヴン、楽しんでね!」
今日の私はレイヴンに幸せな言葉をもらったから、レイヴン自身にも幸せな体験をしてほしい。
きっとこれから二人のお姉さんと楽しい時間を過ごすであろうレイヴンを思い浮かべて、へらり、笑って。
いいことをした!そんな気分で意気揚々と酒場を後にした。
「ほんっと、いい子なのよね、あの子・・・・・・」
「・・・・・・苦労するわね、レイヴン」
「・・・・・・追っかけるんでしょ?ほら」
後ろでそんな会話がかわされているとかしらないままで。
とっても良い気分で夜の街を歩いていれば、前を歩いていた漆黒の髪。
女も羨むそれを見間違えることはなく。
「ユーリー!」
へらり笑って名前を呼べば、こちらに気づいた彼がゆっくりと私へと近づいてきて。
「どうした?ご機嫌じゃねぇか」
そう言いながら子供にするみたいに頭をくしゃりと撫でられた。
風にさらされていた体は、そのぬくもりにもっととすりよって。
「んっふふ、嬉しいこと、あったんですよぅ〜」
お酒で上がったテンションだと、男らしいその体にぎゅう、と抱きつくことだってできちゃう。
「なんだ?おっさんに好きとでも言われたか?」
にまにまとした表情で言われた。
レイヴンに?好き?そんなばかな。
「まっさかー!あのぼんきゅぼんが好きなレイヴンが、私を選ぶ訳ないじゃないですかぁ!」
ユーリも私の絶壁はよく知ってるでしょう?
自慢じゃないけど胸を張ってみる。
「…おっさんのへたれ」
「ん?なんか言いました?」
「いや、なんでもない。んで?なに言われたんだ?」
さっさと白状してしまえ、と目で促されて、思わず口を押さえた。
なんだか、教えてしまうのがもったいないような気がして。
それでいて、知ってほしいという欲もあって。
__まあお酒でゆるんだ思考では正常な判断はどこかへ逃げて行っている。
すぐさま知ってほしい、という方に天秤は傾いたのだが。
「あの、ですね、」
見下ろしてくる瞳がとたんに恥ずかしくなって、ちょっとだけ、うつむく。
それでも、ユーリの反応が気になって、少しだけユーリをみる。
柔らかなそれが、続きを優しく促してくれるから、へにゃりと、笑みが溶けていく。
「レイヴンが、あの、レイヴンが、私のこと…大事な、仲間って言ってくれたんです…よ、ね・・・・・・」
きっと私の顔は今非常にだらしないことになっているのだろう。
だって、ユーリの顔が驚いたようにみえる。
ねえ、すごいでしょう?
あの人が、生きることを諦めていた、あの人が、私を仲間だと認めてくれた、それだけで
「天にも登る気分ですねぇ〜」
へにゃへにゃ笑いが止まらない私を、ユーリは小さく笑って、抱きついていた私をぎゅうと抱きしめてくれた。
「ユーリー?」
普段されないそれに何事かな、と思いながら名前を呼べば、くつくつと笑い声。
「かわいいなー!はちっちゃくてかわいいなぁ!」
「えー、ほめてもなにもでないですよぅ〜しかも私ユーリよりお姉さんなんですけど〜?」
「そういうとこもかわいいかわいい」
「も〜、ユーリはかっこいいですけどねぇ!」
ぎゅうぎゅうして、笑って。
ああ、私の大事な仲間たちは、本当に皆優しくて。
「お前は俺にとっても大事な仲間だからな。大事な仲間にぎゅうしてやる〜!」
「わーい!私もし返す〜!!」
とても近い距離で、ユーリの香りに包まれながら二人してくすくすと笑っていれば、べりりと、突然ぬくもりが遠ざかった?
「む?」
「ちょっとちょっと!!なにしてんの?!」
私の背後から聞こえてきたのは、レイヴンの声。
大好きなその声に嬉しさのボルテージは更に上がっていって。
「レイヴンにも、大事な仲間の証〜!」
「わ、ちょ、お嬢!」
ぎゅう、とその紫に抱きつけば慌てた声。
ユーリとは違う香りにぬくもり。
私の心臓は、バクバクと音を立てる。
ああ、すきだなぁ。
私のものになってほしいとかそういうのじゃなくて、この人の存在が感じられる場所で、この人と話せて、笑いあえて、時々触れ合えて、そして――この人が幸せだと思えるその瞬間に立ち会えたらば、そんなに嬉しいことはない。
そして、この人にとって、幸せだと感じられるのは仲間のそばで――
だから、私がその中に入っているってだけで 幸せすぎて、どうしようもない。
「ん〜??あれ、お姉さんたちと幸せな時間じゃないの?」
そういえば、酒場のお姉さんたちはどうしたのだろう。
ぴょこと顔を上げて問えば、困ったように笑っているレイヴン。
「だって、今日はちゃんとの時間じゃない。ほかの女の子の相手する気はもともとないんだけど?なのにちゃん、あっさりでていくから・・・・・・」
今日は、私との時間。
それは、その、とてつもなく、うれしいじゃないか。
へにゃり、しまりのない顔が、これでもか、ってくらいに変化していく。
ああ、本当に、すき、だなぁ。
ぎゅうううう、とその大好きな人を抱きしめて、ふわふわとした感覚の中、最後に呆れたようなレイヴンのため息を 聞いた気がした。
「このへたれ」
「うっさいわよ青年」
配達ギルドと同居人
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うちの二人の精一杯の甘さだなこれ。
ちなみにこの後、お嬢は酒場のお姉さんふたりとめっちゃ仲良くなって、胸を大きくする方法を教えてもらうようになる。
ありがとうございました!!
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