ドリーム小説







配達ギルドのあれこれ 











おなかいっっっぱいたべた、はずなのに、なぜか満腹が来ない。
・・・・・・え、この魔導器つけてる限りずっとこれなの?なにこれ怖い。



あの後皆で移動した先はダングレスト。
どうやら全員の時間がとれたためドンの墓参りに行く予定だったらしい。

夜のダングレスト、レイヴンの部屋。
夕ご飯を食べ終わった私は、レイヴンに呼ばれて。
前は夜に異性の部屋を訪れてはいけないと言っていたのに今度は招き入れてくる。
どういうことだ。
__髪を下ろしたレイヴンは、どことなく、いつもよりもまじめに見えて。

私をいすに座らせるとレイヴンは自分の荷物をごそごをと漁って__手紙の束を、取り出した。
防水加工された袋に入ったそれは、どう見ても私が最後、レイヴンに、とおいていったもので。

開封された様子のないそれにおや、と首を傾ければ、レイヴンがその手紙の束を私に渡してきた。

「__レイヴン?」
「配達ギルド、でしょ?受け取りの証拠もなしで渡しちゃだめでしょうが」

ああ、そういえば、受け取りのサインもらい忘れていたなぁ。
律儀に読まずにいたのか、この人は。

戻ってくるはずもなかった私を、待とうとしてくれていたのか。

レイヴンは、貴族の男性が女性をダンスに誘うときのように私の前で腰を折った。

「俺はダミュロン・アトマイスともうします。さて、お嬢さん俺に何か用事かな?」

茶目っ気をたっぷりと含ませた表情で。
それでいて、優雅に、妙に綺麗に彼はそう問うた。
それならば、答えないわけには行かないだろう。

鞄に手を当てて、もう片方は胸元に、軽く斜めに構えて、そしてゆっくりと口上を紡ぐ。

「毎度おおきに、配達ギルド、黒猫の足です〜ご用命とあれば、例え火の中水の中。ただし配達物の安全は保障しかねます〜燃えない紙、濡れない紙でどうぞ〜天の上地の下、はたまた砂漠の中だって。運んで見せます運ぶのは、荷物だけにあらず。信用も一緒にお届けします〜どうぞ配達ギルド黒猫の足をご贔屓に〜」

口上を述べて、へらりと笑う。

「ダミュロン・アトマイスさん、配達表に、サインをお願いできますか?」

サインを確認して、先ほど受け取ったばかりの手紙を渡せば、くしゃり、彼が笑った。
それは、いつもの笑みよりもずっと幼くて。
とても、柔らかいものだった。

ゆっくりとその手紙を、彼は手にとって。
掠れて読みにくくなった手紙をなぞって。
開けたそれに目を通す。
一通り目を通したのか、レイヴンは__ダミュロンは行き場のない感情を持て余すように手紙を手元でもてあそぶ。

「地元でやんちゃしすぎて、騎士団にでも入って矯正されてこいって、放り出されたのにな」

困ったように眉を寄せて、それでいて、うれしいと素直に口に出せないような表情を浮かべて。

「__俺の身を案じる言葉ばっかだ」

ぽつり、落とされた言葉は__ああ、確かに、迷子の子供のよう。

「一度、騎士団に届けに行ったとき、ダミュロンは外出中って言われて代わりにそれも渡してあげて、って頼まれたんです」

メモの束も読むように進めれば、彼は一度動きを止めて。

「女性の騎士さんに」

綺麗な瞳が、揺れる。
その束に触れた手が、ふるえていて。

「ほかでもない、ダミュロン・アトマイスに、渡してって」

メモの束を受け取った彼は、一枚、また一枚とそれを開いては目を通していく。
短い文章ばかりなのだろう。
すぐに次のメモへと切り替えられていくそれが、ぴたり、動きを止めた。

「__きゃなり__」

小さくこぼされたのは誰の名前なのか。
わからないけれど、肩を震わす彼のそばに今はいるべきではないと、判断して。
部屋を出ようと背中を向ける。

「っ、レイヴン?」

ぐ、っと何かが引っ張られるような感覚。
後ろを見れば、鞄のひもが弱々しく引っ張られていて。
その手をたどれば、うつむいたまま肩を震わせるレイヴンの姿。

私を慰めるときは、あんなにも力一杯包んでくれたのに。
慰めてほしいときは、なんて弱々しい引き留めかたなのか。


たまらない、気持ちになる


私の鞄に触れる手はそのままに、彼の前で反転して。
私が届く範囲で、レイヴンに手を伸ばした。
髪の降りたその頭を引き寄せて、自分の方へと誘導すれば、レイヴンは一度だけふるえて。
そうして、ぎゅう、と痛いくらいの力で、しがみついてきた。




この人の過去に、私はいない。
この人の未来に、私が共にあれれば、だなんて欲張りは、いわない。


ただ、この人に幸せのひとかけらだけで良い。


渡せるような、存在になれれば、いいな。






配達ギルドと届けた手紙






「ね、ちゃん。一緒に住まない?」

昨日あのまま寝てしまったらしい私の目覚めは、おはようでもなんでもなく、そんな言葉だった。

「俺、リタっちに定期的に胸のメンテナンスしてもらわないといけないのよ。ちゃんにとっても都合がいいでしょ?」

いつもと同じようで、けれどどこか吹っ切れたかのような表情のレイヴン。

いつの間にか、ちゃん、と呼ばれることに違和感を感じなくなってきたなぁ。
そんなことをぼんやりと考えていれば、どう、とのぞき込まれて。

この人のことだから、男女の関係とかそういうことじゃなくて、行き場を失った私を気にしてくれているだけなのだろう。
けれど、好きな人と一緒に入れるチャンスを逃すほど、私は無欲ではない。

一も二もなく頷いた。





まあそれ以降、

「お、邪魔してるぜ」
「おかえりなさい」
「今日のご飯なに?!」
「ユーリには、お手製のおでんをふるまうのじゃ!」
「ねえユーリたち、ここいつからギルドのたまり場になったの?」

カロル君たちのギルドのたまり場になったり、

「大将!ちょっと待ってよ!!」
「待たぬ。三日ほどを連れて行くぞ」
「ちょ、大将!!お嬢返しなさいって!」
「いってくるわレイヴン〜」
も抵抗しなさい!!」

アレクセイさんが定期的に遊びに来ては魔導器を持つ私を調査に連れ出したり、

「トウデーイのディナーは、ブウサギ肉のステーキ、ミュウの滴は涙と共にオタオタの卵を添えてデース」
「意味が分からないけど、ブウサギはおいしそう」
、胃袋つかまれてる相手、多すぎない??ていうか、イエガーなにしてんのよ、人の家で」

イエガーさんがおいしいご飯を作りにきてくれたり、

「聞いてください!!リタが!」
「ちょっと、エステル!それ黙ってっていったじゃない!あー、とおっさんは動くな!!計測に支障でるでしょうが!!」
「リター!エステルとの扱いの差に不満を感じます!」
「ご、ごめん、そんなつもりは、なかったんだけど・・・・・・」
「リタっちー!俺も!」
「だまれおっさん」

エステルの話を聞きながら、リタの身体検査を受けたり。





そんな毎日が待っていたと知るのは、もう少し先のお話








配達ギルドのあれこれ これにて終演











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おつきあいいただきありがとうございました。
だめです、おっさんと恋愛に進めない!!
仲間と一緒にいることに幸せを感じてるレイヴンはたぶんそれ以上の幸せはいらないって思ってそうだし、
夢主も、自分の存在がレイヴンに幸せのひとかけらであればいいなぁ、位にしか思ってない!!

生き返らされてしまった結果、道具のように生きていた存在と
元の世界に戻るためにからっぽでいたかった存在のお話でした。

やりたいとこだけやっていったので、満足です。

あと少しだけ番外というか恋愛っぽいの最後にあげて、終わりです。




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