ドリーム小説












。今日からあなたにお父さんができるのよ。」


母親がとてもとても綺麗に笑いながら発した言葉は、私にとって受け入れがたいものであった。












一、家族が増えました。











父親が世間一般で言う蒸発とやらをしやがったのは、私が生まれて五年たつかたたないかの時。

まだ幼すぎる私を母は必死に守って育ててくれて。

そして、私自身もそんな母を少しでも助けられるように、家事はもちろん、こうこうにはいってからは近所でバイトやらを始めたり、せわしないながらも、充実した日々を過ごしていたのだ。

母と二人。

それがいろんな場所で不利に働くことはよく理解している。
外から言われる言葉の意味も、同情というなの優越感も。
母はそれらすべてを綺麗に笑って受け入れていた。

それらすべてを飲み込んで、母と二人、ずっと生きていく、___そのように思っていたのだ。

今日までは。



「初めまして、君がちゃんだね?」

ふにゃり、しまりのない顔をして笑う二人の大人。

その表情すべてが、雰囲気が幸せだと発するそれに、反対などできるはずもなく。

母に衝撃発言をされてから、あれよあれよとつれていかれた一軒家。
外から見てもえらく高級なその家の呼び鈴を躊躇なく押した母。

そこから現れたのはなんというか、とてつもなく整った顔をもった美男子だった。

「ふふ、僕にも娘ができるんだね。」

私を見て恥ずかしそうに頬を染めて、とてもとても幸せそうに言葉を紡ぐ、おそらく父になるはずの人。

「突然でごめんなさいね?、宋右衛門さんとの結婚、許してくれる?」

今までずっと私を育ててくれていた母が初めて口にした願望。
それを嫌だと言葉にできるほど薄情な私ではない。

私という存在に縛られ続けたこの人が、ようやっと手に入れられるであろう幸せ。

それを壊す権利なんて、私にはないから。


「おめでとう。」


そう告げた言葉に偽りはなく、浮かべた笑顔は心からのもの。


「ありがとう、ちゃん」



綺麗に笑うこの人が、私の父親になる。
そんな実感まだないけれど。

それでも、この人が私を娘だと言ってくれるなら、娘だと、愛してくれるならば。


今はまだ父と呼ぶ勇気はないけれど、いつか、本当の家族のように。




「僕にもね、息子がいるんだ。」

と一緒の学校だから、知ってるかもしれないわね。」

「・・・・へ?」

ふわふわ、幸せそうな二人を見て、私まで幸せな気分になっていれば、もう一つ衝撃発言。


今この二人はいったいなに言った?


父親ができる、それは素直にうれしいこととして受け入れようじゃないか。。

しかし兄弟ができるだなんて、考えたことなどない。



「ただいまー」


そんな私を置いてきぼりに玄関から響く声。

良いことなのか、どうなのか、それはあまり聞いたことのない声。

「おかえり。」

「おかえりなさい。」

音を立てて背にしていた扉が開かれた音がした。

「あ、朔さん。もう来てらしたんですね?」

母へと向けられる声、どこかで聞いたことがあっただろうかと頭を巡らせる。。

「勘右衛門、今日から朔さんはおまえの母になるんだ。」

勘右衛門

なんだ、その名前どこかで聞いたことがあるような・・・?


「ふふ、では改めまして、お母さん、今日からよろしくお願いしますね!」

自分を抜きにして楽しげに進まれていく会話。

まったくもって入り込めない。

「君がちゃんだよね?」

呼ばれた名前に固まっていた顔を動かしてゆっくりと振り向く。

「俺は尾浜勘右衛門。今日からちゃんの兄になるんだ。よろしくね。」


そこにいたのは、話したことのない、でも、その顔は学校中に知られているであろう人物。


一つ年上のその人は、人懐っこそうににぱりと笑うその人は、私の学校でとても人気のある先輩の一人だった。





そうして、兄も増えました。






※※※※
勘右衛門 にぱり
兵助 ふわり
三郎 にやり
雷蔵 ふにゃり
八左ヱ門 にかり
って笑い方なイメージ。
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