ドリーム小説
「聞いた?今日尾浜先輩、女子生徒と二人乗りしてきたんだって!」
「え?先輩に彼女できたの?!」
いつもよりもざわめく教室の中、机にうつぶせてが思うことは一つ。
(なんでこうなった!!)
三、大事な幼なじみです。
始まりは朝のことだった。
これから自分の家になるといえど初めての場所で熟睡もできず、重い体を引きずって作った朝食。
さらに自分のお弁当を作るついでにと勘右衛門の分をも作っておけば輝くばかりの笑顔で礼を言われて。
あまりにもうれしそうなその表情に若干引きながら。
そして彼をそのままに先に家を出ようと玄関に向かって気がついた。
ここからの学校の行き方わからない。
玄関でどうしようかと固まるに向けられたのは兄となった勘右衛門の満面の笑みだった。
その右手にはちゃらりと自転車の鍵をもち、手を差し出されれば時間との兼ね合いもあってそれを避けることなんかできるわけもなく。
そうして乗せられた自転車の後ろ。
目の前には勘右衛門の背中。
服を軽く握って。
初めての二人乗りはそんな感じで始まって、学校に近づくにつれてどんどん増えてく人に見られぬように顔を伏せて。
ひしひしと感じる視線を受け流しながら体を縮こまらせながら。
どうか人物が認識されませんようにと願う。
なんだかんだで人気のあるこの人と一緒にいるところを見られれば、何を言われるかわからない。
ゆるりと目の前の人を見る。
この人の妹になってしまった以上、平凡な生活はあきらめねばならないのだろうか。
全力で披露した体を引きずってたどり着いた教室。
「・・・どうかしたのか?。」
そっと話しかけてきたのは幼なじみ。
小さな時からの、大事な存在。
「・・・滝〜。」
手を伸ばして自分よりも高い背の彼に抱きつく。
「??どうした、?」
少々驚いたようだが優しい言葉を返してくれて。
ぎゅうぎゅうと力を入れてすがりつけば困ったように、でも頭をなでてくれる。
「何があった?」
優しく問いかけてくるそれにすべてを暴露したくなって、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
「お母さんが再婚した。」
「は・・・!?」
突然のそれに滝も驚いたのだろう。
母親ぐるみで仲良くしていたから余計に。
「義理の兄弟ができました。」
「え、ちょ、はぁ!?どういうことだ!?」
驚きはもっともです。
突然そんなことを聞かされて、母の手前受け入れないわけにはいかなくて。
それでも混乱する頭は未だに理解をしてはくれず。
「滝・・・私どう接してったらいいか、わかんない。」
そう、どういうふうにつきあっていけばいいのか、その距離感をはかりかねている。
突然現れた母の思い人を父と呼べるほどは父という存在を知らなくて。
笑って名前を呼んでくれるその存在に笑い返せるほど大人ではなくて。
兄と呼ばれるものができたところでそれはさらにどう振る舞えばいいのかわからない未知の存在で。
かといってすべてをしらないと現実から目をそらせるほど子供ではない。
どうすればいいのか、わからなくて。
「・・・何でも、話したいことがあるなら言え。困ったことがあったなら私を頼れ。泣きたくなったら私のところに来い。」
優しい幼なじみの声をじわりと受け止めながら小さな声でありがとうとつぶやいた。
「ずるい。」
ぎゅうぎゅうと滝にしがみつく腕に力を込めていれば聞こえてきた平坦な声。
何事かと顔を上げる前に背中から感じるぬくもりと重たさ。
「ぐぇ、」
二人分の重たさを一心に受けることになった滝があげたつぶれたような声。
「滝もも私を仲間はずれにするの?」
すねたような口調だがおそらく常の無表情なのだろう。
ぎゅうぎゅうと抱きつかれてさらには頭をぐりぐりとなでられて。
「喜八郎重い!!」
「大丈夫滝ならできる。」
「馬鹿を言うな!」
がらりと変わった自分の生活。
でも変わらないものは確かにここに存在していて。
「おはよう、綾ちゃん。」
もう少し、距離を測れるまではこの場所で弱音を吐くことを許してください。
一つ下の学年=四年生=滝ちゃん。という謎の構図で幼なじみ抜擢。
綾部は友人。
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