ドリーム小説
ゆるり、瞳を開けた先、そこは木の天井が広がっていて。
鼻につくのは消毒液の匂い。
それはこの世界で目を覚ました時と同じで。
一度、二度。瞳を瞬かせて。
ゆっくりと首を動かす。
「目が覚めましたか?」
声の先、見れば柔らかく笑う眼鏡の少年。
それは乱太郎君で。
「どこか痛いところかはありませんか?」
優しい声が、じわり、体にしみ込んでいって。
今までのどろどろにくすんでいた気持ちがゆるりゆるり、解されていって。
「さん?」
言葉を発さない私を心配するように、言葉が紡がれて。
「どうして、ここに・・・?」
大丈夫だと、そう答えるはずだったのに。
口から出たのは違う言葉で。
「・・・ちょっときり丸が紹介したところにきな臭いうわさがあるって聞いたんです。」
ゆっくりと、まるで幼子に言い聞かすように。
「助けに行くのが遅くなってしまってすみません。」
ふわり、その笑みはとても優しくて。
じわじわと、ようやっとその温もりを実感していって。
「っ、乱太郎!」
がたり、音が立てて開いた襖。
息を切らしてたたずむ少年。
否、きり丸君で。
「き、り丸、君・・・?」
呼んだ名前に反応するように、きり丸君が、こちらに飛びついてきて。
ぎゅう、と強く、体を抱きしめられる。
「ごめんなさい、」
「あの時、あの場所で、あなたが俺を救ってくれた」
「あの時のあなたのおかげで、今の俺がいるんです。」
紡がれる言葉達。
耳元で響く声は、今にも泣きだしそうで。
そして、その言葉の意味が、じわり、理解できて。
あの時、あの場所で、この子に会ったことによって、私の世界は変わったの。
あの時、あの場所で、あなたがいたことによって、今の私はここにいるの。
「ごめんなさい。」
「あの時、助けられなくて。」
「私がもっと力があれば、あなた以外を助けられたかもしれないのに」
繰り返す繰り返す。
懺悔の言葉。
繰り返す繰り返す。
謝罪の言葉。
「っちがうっ!俺は、俺はっ!!」
でもね、それよりもずっといいたいことは、
「ありがとう、私を思い出してくれて。」
誰ひとり、私を知らない世界で。
誰ひとり、私に関係ない世界で。
たった一人、私を知ってくれていた人。
あなたがいたことで、私の存在理由ができた気がするの。
強く強く、言葉にならない声を伝えるみたいに、力を込めて抱きしめられて。
「ありがとう、。」
小さく耳元で呟かれた言葉に、答えるように優しく抱きしめ返した。
あなたの存在は、私を変えたの。
あなたの存在が、今の私を作ったの。
あなたの存在が、俺の世界を変えた。
あなたの存在が、俺の未来を示したんだ。
どうやって繋がったのか、そんなことわからない。
どうやってあなたに会えたのか、そんなことわからない。
どこからあなたが来たのかは分からない。
どうしてあなたがあそこにいたのかは分からない。
それでも、あなたが私を変えたのだけは正解で。
それでも、あなたが俺を作ったのは本当で
どうかどうか、あなたに願うのは、あなたが幸せであるように。
どうかどうか、あなたに願うのは、少しでもあなたが笑ってくれているように。
祈る祈る、願う先などないと理解していても
祈る祈る、あなたが少しでも幸せを感じてくれることを。
共に願う、互いの幸せを
※※※
きり丸連載終了です。
10話くらいとか言ってたのに・・・。
とりあえず、泣いてるきり丸を慰めたかっただけのお話。
ふわふわとした感じの雰囲気でしたが、夢主さんは結構年上っていうことしか決まってなかった。
全体的に分かりにくかったり、したところがあったかも?ですが、ここまでお付き合いくださってありがとうございました。
次こそは、もっと短い中編を・・・!
2012年5月10日。
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