ドリーム小説






宵闇 喜八郎1














「っ、」

「もう終わりか?。」


「っ、まだです!」

「はっ、かかってこい!」


はじき飛ばされた体を必死で起こして。

はじき飛ばされたくないを再び握り締めて文次郎へと向かっていく。



襲撃事件の後からは今まで以上に鍛練に励むようになった。

感じている他との違いを努力という名のもので埋めようとしていた。

自分の力を、次こそは多くのものを守れるように。

後輩が傷つくことのないように。


あのとき三郎に頼んでからいろんな先輩が合間を縫っておしえてくれるようになった。

五年生だけでなく、こうやって六年生までもが様々な技を、技術を、に与えてくれるようになった。








「、ありがとう、ござい、ました・・・」


ぜえぜえと息を荒げては深々と文次郎に頭を下げた。

それに一度頷いて文次郎は縁側に座っていた仙蔵の横にどかりと座り込んだ。

二人とも今日やる分は終わっていた言うことで委員会がなかったらしい。

「疲れただろう、。茶を用意してやろう。」

「ありがとう、ございます・・・」

仙蔵に手招きされて傍に行けばそんな言葉。

くしゃり頭を撫でられてことで今まで固くなっていた体がゆっくりとほぐされていくのがわかった。


どん、という衝撃に倒れそうになったのを文次郎によって支えられて。

「仙ちゃん、文次郎、!」

委員会の仕事を終わらせたのか走ってきた小平太に仙蔵が何も言わずに茶を一つ増やした。

「今日は明日の二年生の実習用の道を下見してきた。裏裏裏山までいったぞ!」

「お疲れ様です。七松先輩。」

にこにこと満面の笑みを浮かべて今日の委員会のことを話してくれる小平太に笑顔がこぼれる。

(頭の端の方では滝夜叉丸死んでるだろうなあ、ということを思いながら。)


ことり

目の前に置かれた甘味にしたずつみを打ちながら三人の話をそれとなく聞く。

最近の日常の一つにもなり始めた風景であった。

「あ、そう言えば、」

そう言って小平太がの頭に手を伸ばしたその瞬間、


ふわり

柔らかな風が吹いたと思ったら小平太との距離は不自然なほどに開いていて、目の前には自分と同じ紫色。


「先輩、あんまりこれに触らないでください。僕のです。」

「喜八郎?」

透き通るような声で響いたのは大事な友人の声。


言われた内容の意味がわからず首をかしげたをちらりと横目で見てため息一つ。

喜八郎越しに見た向こうでは仙蔵が口元に手をやって笑っていて

文次郎はと同じようにわからないという顔。

小平太はにぱり、とさらに嬉しそうな笑み。


不思議なそんな光景に再び首をかしげた

くるりに向き直って腕をつかんで立ち上がった喜八郎はそのまま縁側から地面に飛び降りた。

必然的に腕を掴まれているはそれについていく形になって。

「それではこれで失礼します。」

に顔を向けることなく先輩たちの方を見て頭を下げて。

そうしてそのままどこかに向かって歩き出した。

「どうしたんだ?喜八郎。」

慌てて先輩たちにお礼を述べて喜八郎について歩き出す。

声をかけても返事はなくどうしようかと思っていればぴたり突然足を止めた。

そのままくるり振り向いたかと思えばぐいと顔をに近づけて大きな目をくりりと瞬かせていった。

、これから一緒にたあこちゃん掘ろう。」

突然の申し出に驚いたが嫌ではないのでいいよ、と返事をしようとしたら


さわり


新たな気配。

それに身構えるよりも早くそれは喜八郎の後ろに現れて。


「師匠!」


一番にそれに気がついたが声をあげて、それに喜八郎もゆっくりと振り向いて。


「久しぶりですね、。元気にしていましたか?」

ふわり笑みを浮かべて問うた。

それに頷いてどうしてここにといえばふわりさらに笑って彰義は告げたのだった。


「今日は少し喜八郎君にお話があったのですよ。」












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