ドリーム小説
宵闇 弐ノ壱
「はっ、」
「っ」
向かってくる足をしゃがむことでよけてしゃがんだままで滝の足を払う。
予想されていたであろうことは想定の範囲内。
飛ぶことでよけた滝の後ろに回り込んで肘を彼の頭に打ち込む。
「っ!」
が、それは瞬時にこちらを向いた彼の腕に阻まれて。
滝に後ろを向けたままだった。
滝がの突き出した肘をつかみの体を地面にたたきつけたことによりその勝負は終幕を迎えた。
「〜〜〜〜っ、」
地面にたたきつけられた衝撃に悶えていれば授業の終わりを告げる鐘が聞こえてきて。
「すまない、大丈夫か?。」
目の前に差し出された滝の手をつかみ起き上がった。
痛む体を押さえながら、集合している他の級友のもとに向かう。
「今日の授業はこれで終わる。解散!」
その声を皮切りにざわざわとした喧騒が辺りを包んだ。
「あれ?が負けたの。」
喜八郎が近づいてきて痛みで涙目のと困ったような顔をする滝夜叉丸を見て聞いた。
それにうなずけば不思議そうに首をかしげて。
「珍しい。いつも滝が負けるのに。」
そう言う喜八郎と共に三人で食堂に向かった。
「わあ、ちゃんぼろぼろだねえ。」
「なんだ、今回はが負けたのか。」
食堂で定食を受け取って席に着けば先に来ていた三木エ門とタカ丸がそう言葉を発する。
「この間寝込んだせいで体がなまったみたい。あんまりうまく動けなかった。」
二人にあいまいに笑ってお箸を持てば先に食べ出していた喜八郎におかずを一つ取られて。
「、それちょうだい。」
「おい、喜八郎。行儀が悪い!」
お母さんのような滝夜叉丸の言葉を喜八郎は無視。
「はっ、相変わらずお前はどこのお母さんだ?」
「何だと三木エ門。そういうお前こそ___」
始まったやり取り。
はいつものことだと諦めてもそもそと食べ始める。
いまだにの定食をつつく喜八郎をそのままに、困ったように視線をうろうろとさせるタカ丸に声をかける。
「タカ丸さん。気にせず食べたほうがいいですよ?かかわると面倒ですから。」
がやがやと新たに入ってくる他の学年のためにも早く席を空けてあげるべきだと思い箸を速めた。
「。」
ぽんと頭に乗せられた手。
「三郎先輩。」
何の用かと名を呼べば今日はいつもより長めに委員会をするからできるだけ早く来るようにとのお達しで。
「わかりました。庄たちには?」
「まだ会えてない。もしあったら言っておいてくれ。」
「わかりました。」
後ろにいた雷蔵やお盆の中の豆腐に意識が言ってる兵助、あいかわらずいい笑顔をしている八左衛門にも挨拶をして食事を再開する。
「だいたいお前はなあ!戦輪戦輪とうるさいんだよ!」
「それをいうならお前はさちこやらゆりこやら・・・幾つもの女(と書いて火器と読む)と二股どころか三股も四股もしてるじゃないか!
それに比べれば私は戦輪の戦子一筋・・・お前のような浮気性の男にあれやこれや言われる筋合いはないっ!」
「っ、さちこやゆりこをお前ごときに呼び捨てにされる覚えはないっ!」
未だに言い合いをしている二人。
もう何の言い合いをしているのかもわからない。
その二人のお盆からはほとんど食事が減っていない。
否、滝夜叉丸のお盆からはメインのおかずがひょいひょいと消えていっているが滝夜叉丸はそれに気づいてはいない。
「ってことは、次は校庭で実習だねえ。」
先ほどまであんなにも心配していたタカ丸さんも今では横に座っている二年生の集団の中の一人三郎次と仲がよさそうに話している。
話の内容からして次の授業は二年生の実習に参加するようだ。
後少しのご飯を掻きこんでちらり、タカ丸さんの方を見ればなぜかその向こうにいた四郎兵衛と目が合って。
ふにゃり柔らかい笑みを浮かべる彼に横の惨状も忘れて心が和らいだ。
「先輩っ、今度また体育委員会に参加してください!」
可愛い顔でそんなことを言われれば断れるはずもなく。
参加させてもらう、と答えて席を立った。
同じく食べ終わった喜八郎、タカ丸も立ち上がればそれにようやった二人も言い合いをやめて。
そうしてようやっと彼は気づく。
「うわあ!私のお昼がっ、白米しか残っていないっ!」
喜八郎がそれにごちそうさまでしたとつぶやいていた。
三木エ門と滝夜叉丸を置いて食堂を出て次の座学のため教室に向かう。
何気ない話を喜八郎とタカ丸と交わしていれば前から大勢の声と足音が聞こえてきて。
「庄。」
現れた集団の中にいた一人に声をかける。
その声に11人が皆一斉にこちらを見たのに少々驚く。
「先輩、何か御用ですか?」
不思議そうに尋ねてきた庄に先ほど三郎から伝え聞いたことを話す。
「わかりました。早く行きますね。」
にぱり子供特有の笑顔。
「お昼はまだなんだろう?早く食べて来い。時間なくなるぞ。」
頭をなでてそう言えばはーいと何とも素直なお返事がたくさん。
食堂へと走っていく彼らを見送り放置していた喜八郎たちと教室へ向かおうとすればくい、と引っ張られた服。
「?」
振り向けばそこにはさっき走って行ったはずの水色が一人。
「どうした、きり丸?」
尋ねればゆっくりと上がる顔。
その瞳にはありありとした不安が浮かんでいて。
「先輩、今日夜行ってもいいっすか・・・?」
恐る恐る発せられた言葉。
そんな姿がいとおしくて、了承の返事を返してやればようやっと彼はいつもの笑みを見せてくれた。
走っていく彼を見て浮かぶのは彼の女。
あの人が元の世界に帰ってから幾分かの時は過ぎ去った。
それでも、消えた彼女を思い心痛めるものは少なくない。
それは幼い子ほど顕著に表れていて。
その筆頭ともいえようきり丸は事あるごとに不安定になる。
「、行くよ。」
喜八郎の言葉に慌てて前を向いて進みだした。
傷はまだ癒えることなく存在し続けていた。
我が宅の四年生の実力というか、体術は
綾部>>三木=滝くらいです。
綾部は力で押す。
は素早さで押す。
第二部スタートです。
気長に待っていただければいいなあと思います。
ちなみに第二部は日常・・・というよりおっきな事件を一つ。
そうして恋愛編!の予定にしてますです。
傍観編からほとんど時間が経ってません。
寝込んでいた、と言ってたのは彼女が帰った時のことです。
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