ドリーム小説
配達ギルドのあれこれ
「ベリウス様は、新月の夜にしか人に会われない」
無事ノードポリカへとたどり着き、さっそく面会の手続き、と向かった闘技場。
しかしながら私の予想通り、今会うことはできない、と返されて。
さて、どうしようか、と思案する。
と言っても、新月の夜にしか会えないのだ。
待つしかない。
「配達ギルド・・・・・・?」
仕方がない、と踵を返した彼らの後ろ。
最後尾にいた私に、彼、ナッツは初めて気づいたようで。
「お久しぶりです〜毎度おおきに、配達ギルド”黒猫の足”です〜いつもご贔屓にしていただいてありがとうございます〜」
へらりと笑いながら、彼宛の手紙を取り出す。
元々彼に用事はあったから。
スムーズにここまでこれてラッキーだった。
「またのご利用お待ちしてます〜」
サインをもらって手紙を渡して。
営業スマイルを浮かべていれば、ナッツは微かに頬をゆるめて。
「ベリウス様がまた配達ギルドに頼みたいことがあると言っていた。頼まれてくれるか?」
「もちろんです〜」
「__次の新月の夜にベリウス様から直接話を聞いてもらっても?」
「喜んで〜」
ギルドの長に頼まれるなんて、光栄以外の何者でもない。
なんでもどうぞ、と笑ってみせれば、ナッツは満足そうに頷いた。
「次の新月には戻ってくるんで、私ちょっと他のお仕事してきますねぇ」
彼らにそう告げて一足先に外にでる。
そうすれば、先ほどまで共にいた、パティちゃんの姿があって。
私の視線に気がついたのか、大きな瞳が私を映す。
「パティちゃん」
名前を呼べば、ふにゃり、かわいい笑顔が返された。
「ギルド姐だけかの?」
きょろきょろと私の後ろを確認しているのは、ユーリさんの姿を探しているのか。
一人だと告げれば微かな落胆。
けれどそれは一瞬で
「でもギルド姐に会えてうれしいのじゃ!」
と言ってくれた。
何この子かわいい・・・・・・
はじめ魚人に食べられていたときは何事かと思ったけれど、かわいくて賢い女の子だ。
「パティちゃんは買い物?」
「のじゃ!」
にこにこと笑いながら露天に品物を注文していく。
手際よく準備していく店員さんを眺めていれば、どこからか一人、走ってくる男性。
そのまま店員になにか耳打ちしたと思えば、先ほどまでにこやかだった彼女の表情が曇った。
「おお嬢、アイフリードの孫、だって?」
先ほどまでにこやかだったパティちゃんの表情が一瞬で暗くなる。
だれだ、アイフリードって。
黙ってガルドを払ったパティちゃんにもうできるだけ来ないでほしい、と告げた店員に思わず口が開いた。
「__このお店はお客さんを選ぶんですねぇ」
私の言葉になんとも居心地の悪そうな顔を浮かべる店員。
「ああ、申し遅れました。私、配達ギルド”黒猫の足”にて配達員をつとめています」
さっ、と顔色が変わった理由は明白だ。
この人の売っている品物は、我がギルドを通しているものが、あるから。
「お客さんを選ぶこと、参考にさせていただきますね__いこう、パティちゃん」
俯いたままのパティちゃんの手を取ると、その店から距離をとる。
いつの間にか近くに来ていたユーリさんたちがその店に何かを言っているのを横目に見ながら、彼女の前に膝を突いた。
「大丈夫じゃ、ギルド姐、なれているからの」
「それは大丈夫じゃないよ」
きょとんとした表情。
あどけないそれは、年相応で。
「痛みが慢性化して、感じなくなったそれは、大丈夫じゃない」
しょんぼりと眉が下がるそれに、小さく笑いが漏れた。
「聞いて、パティちゃん。私アイフリードって誰かわかんないだけどねぇ」
知らない存在を気にかけている暇なんて、ないんだ、私には。
「パティちゃんがとてもいい子、っていうのはわかるよ」
「__うちも、ギルド姐がすごくいい人、っていうのはわかるのじゃ」
そう言って笑った表情は__どこか大人びて見えた。
配達ギルドとアイフリードの孫
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