ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 13









「導師。一緒にきてもらうよ。その女を殺されたくなかったらね」

どうやらまたもや人質と言うものになってしまったようだ。
私ごときが人質なんてつとまるのかと思っていたのだが、どうやらイオンには大変有効だったようで

に何かしたその瞬間、僕はなにがあろうと力を使うのをやめますからね」

かわいい瞳をキッ、と鋭く変えて、シンクに対峙するイオン。
イオンという存在に「守られてる」そう感じた

。すぐに帰ってきますから、危険なことはしないでくださいね?」

・・・私はイオンに何だと思われてるのか、すごく気になる。
イオンの前ではなにも危険なことはしてないと思うんだけど。
いい子でいてくださいね。
極めつけとばかりにその言葉をかけられて、イオンはシンクに連れられて外へと向かう。

「あ、シンク、ちょっとストップ」

手元にあるキャンディーを思い出して思わずシンクを呼び止める。
振り向いてくれないかと思っていたけれど、彼は案外素直にこちらを向いてくれて。

「・・・なに?」

嫌々そうではあるけれども。

「シンク、あーん」

先ほどのイオンと同じように声をかければそれはそれは嫌そうな顔をされた。

「何のつもっ、」

言葉を発した口にキャンディーをねじ込めばもちろん声は止まるわけで。

「・・・甘いんだけど」

「元気になるから」

吐き出されるかと思ったがころり、とそれは彼の口の中に広がったようで。

「ついでにこれも持ってっていいよ」

持っていた残りを押しつけるようにシンクに押しつける。

「・・・」

どうやら気に入ったらしい。
無言でそれを受け取りごそごそとポケットにしまう姿は大変かわいい。

「逃げたりなんかしたら、どうなるかわかるよね」

「いってらっしゃい、気をつけてね」

ポケットにしまいきると仕切直しとばかりにシンクがこちらに言葉を投げる。
にっこりと笑ってそう返せば相変わらずのため息。
ひらり、後ろ手に手を振って、シンクはイオンをつれてでていった。

思っていたよりもずっと素直な少年。
この世界を恨んでいるはずなのに、邪魔だと言われた私を殺めることもなく。
簡単に、殺せるはずの私に、ただ言葉を投げかけることもなく。
まるで全てをあきらめてしまったかのようなその瞳。

ルークも、イオンも、そして彼も。
この世界に生まれ落ちた意味を、ずっと探して、さまよって。
あの笑顔の裏に、あの仮面の下に、いったいどれだけの苦しみを抱き続けているのだろうか
私なんかよりも短い年月しか生きていないというのに、その心にはどんな闇が潜んでいるのだろうか。



どうか、生きてほしい
その想いに嘘はない。














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