ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 19
「ようこそ、グランコクマへ。この国の王として、ジェイドの友人として、お前を歓迎しよう」
金色の光を宿すその王は、太陽のように笑ってそういった。
「どうして、名前を?」
青い水のカーテンをバックに君臨する王。
彼にまだ名前を名乗ってはいなかったはずなのに。
私の疑問にからからと彼は笑う。
「少し前にジェイドから、私的な手紙が届いてな。そこに、・その名前が綴ってあった。それは、お前のことだろう?」
蒼をまとった軍人が脳裏に浮かぶ。
彼と手を組むことを決めたのはそんなに前のことではない。
いつの間にそんな手紙を送ったのだろうか。
そして、今はそれよりも___
「・・・手紙にはなにが書いてあったんですか?」
彼が私的に綴る手紙というものが想像できなくて思わず、問えば、にやり、それはそれはあくどい笑みを浮かべる。
「・、という者に個人的に手を貸す、とな。もしその者が自分がいないときに訪ねてきたならば、家を提供してもいいと」
ごめんなさい、ジェイドさん。
そんなにまともな手紙を送ってくれてるとは思わなかった。
じわり、心臓が熱を帯びる。
あの後、勝手に消えてしまったことで、絶対にあきれられていると思っていた。
どんな形にしろ約束を違えたその行為は彼にとってマイナスにしかならなかっただろうに。
それでも、こんな形で手を貸してもらえるようになるとは思ってもいなくって。
「、ジェイドの家を開けてやろう」
ふわり、柔らかな笑みをうかべるその姿は王ではなく、君臨者ではなく、友を思うただの人だった。
ほぼ見知らぬ人物からの言葉を簡単に信じた。
見かけだけであろうと、それはジェイドさんにとっての信頼の高さを現していて。
「あいつが帰ってくるまで、好きに使え」
帰ってくることを疑わない王様に深く頭を下げた。
※※※※※※
ジェイド・カーティス
彼の資料はとても膨大で魅力的で、すばらしいものばかりであった。
ならされたチャイム。
玄関へ向かえば見慣れた銀髪が目に入る。
ジェイドさんの家に引き篭もる私へ幾度となく外へと連れ出してくれる。
忙しいであろうに私を気にかけてくれる彼。
「アスランさん」
扉を開ければ困ったように笑って彼はそこにいた。
「忙しいところすまないな、。陛下が呼んでいる。でてきてくれるか?」
困ったように笑うのに、その中に含まれる喜びがじわじわと浮き出ていて。
どくり、心臓が音を立てた。
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