ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 2-10









イオンの精密検査とこれから、を決めるために向かったベルケンド。
預言を禁止したはずの世界で、預言を詠む行為を行っている人がいる事実を知った。
イオンの結果は思わしくはないけれど、私の薬を常に必要とはするけれど、いますぐどうこう、というわけではなくて。
安静を言いつけられたけれど、イオンは満面の笑みを浮かべるだけだった。
障気の中和には大量の第七音素が必要である。
その事実に救いを見いだしたかのように思われたそれは、第七音素術士を殺さなければならない、という事実を前に砕け散って。

「ルーク」

ずっと何かを考えるように黙り込んだままのルーク。
そばに行き、横に座っても反応は返ってこなくて。
ゆっくりと名前を呼べば、ようやっと気づいたように視線がこちらに向けられる。
緑色の綺麗な瞳が、私を見てゆらいだ。

「・・・

弱々しい声。
すがるように、願うように、迷子の子供は寄る背を探す。
下がった眉が、不安げな仕草が、彼の今を如実に表していて。

「ルーク」

くしゃり、自分よりも高いところにある頭に手を伸ばして。
優しくなでてやれば、ふにゃり、表情はかすかにゆるむ。

「どうしたの、ルーク」

ゆっくりと問えば、困ったように彼は笑って。

「___俺なら、何とかできるかもしれない、けど」

苦しそうに言葉を続けた。

「同時に、たくさんの犠牲が必要だって、わかって」

ぎゅう、と、私の手をつかんで。

、俺、どうしたらいいか、わかんないんだっ」

痛いくらいに握り締めた。
罪の意識にさいなまれて、いつだって挽回の機会を求めて。
自分のすべてをかけて補おうと、努力する子。

「私は、ルークにいなくなってほしくはないよ」

自分一人で障気の中和をしようと、でも、それには第七音素術士がたくさん必要で。

「でも、障気をなくさないと、ティアが、」

ルークを世界に連れ出して、ルークの世界を作った人。
彼が守りたいと願い、彼を見守ることを選んだ優しい彼女。
障気は彼女を苛んで、気丈に振る舞っている姿は痛々しくて。

「ルーク、あのね、もうすぐ完成するの。障気に対する中和薬」

ずっと開発を続けていた薬。
もう少しで完璧に障気を取り除ける。
後は、試験をするだけ。
だから、ティアは大丈夫。
障気は確かに恐ろしいけれど、今すぐどうというわけではない。

「ルーク」

大事な大事な、私の仲間。

「一人で背負ってほしくはないよ」

私は、知っている

「私たち、共犯者でしょう?」

でも、この世界はもう私の知っている世界じゃない

「一人で突っ走らないで」

大丈夫、まだ、変えられる。

「大丈夫、ルーク。私はいつでもそばにある」

きれいな緑を見つめ返して。

「君の意見は、私の思い」

だから、安心して、あなたの思うように。

「一緒に背負うって、決めたんだからね」

その手をぎゅう、と握り返して。

「___ありがとう、

ルークはちいさくつぶやいた。









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