ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 2-15









ユリアシティでイオンと共に残り、彼らを見送って。
戻ってきた彼らから第七音素を大量消費しているフェレス島の話を聞いた。
その場所に存在するフォミクリー施設の存在と、その場所に依存するアリエッタと。
その話にイオンは表情を沈ませ、シンクはそっと視線をはずした。



「ジェイドさん。少しの間、私はグランコクマに残ろうと思います。」

グランコクマ、謁見の間にて。
新生ローレライ教団に対する考えをまとめて。
必要事項を報告し、皇帝からの命をうけた後。
フランクな雰囲気を醸し出した陛下のそばで言葉を紡ぐ。
ゆるり、向けられる赤い色。
それから、不安げに揺れる緑の瞳。
二人にそっと微笑んで、言葉を続けた。

「薬が、もうまもなく完成するんです」

「まとまった時間がほしい」

私の言葉に視線が交わされる。
イオンが柔らかく微笑んで。
温かな温もりが、頭に触れた。
わしゃわしゃと楽しげにかき回すのはこの国の皇帝。

「よし、わかった。の身は俺が守ってやろう」

にかり、笑って告げた陛下。
その手をパシリと払ったのはシンク。
シンクの口元には不満そうな色。

「ボクが守るから必要ないよ」

それに対して皇帝はからからと笑って。



まっすぐな、心に響くような真摯な声。
見ればルークの綺麗な緑色が私に向いていて。

「ルーク、”大丈夫”だよ」

ゆるりと紡ぎだした言葉。
それは、彼の心を柔らかく解す。
泣きそうに一度だけくしゃりとゆがんだ瞳は、すぐに意志の強いものに。

「行こう、みんな」



踵を返して進んでいくみんなをそっと見送っていれば後ろの皇帝から声をかけられる。



振り向けばそこにあったのは柔らかな笑み。

「ピオニー陛下、」

だから、こぼれたんだ。

「私」

簡単にその言葉が

「ジェイドさんが、好きです」

それに対して皇帝は満足そうな表情を浮かべて。

「___」

ぴしり、音を立ててシンクは固まって。
「ようやっと互いに認めたか。___あいつを、頼むな」
固まったシンクの手を取って揺らしながら、皇帝陛下の言葉にうなずいた。














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