ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 2-20









ふらふらと紅の幼子は私のそばにやってきて、べしゃり、と力つきたように座り込んだ。
アッシュを追ってたどり着いたダアト。
アッシュは障気をなくすかわりにレプリカの保護を求め。
それを聞いたルークは、自分が代わりになることを、提案した。
_俺が、代わりに、_
わかっている。
その決断がどんなに苦しいものなのか。
彼がそこに至るまでにどんなに傷ついたのか。
皆の話を聞いてきたのだろう。
その背中はひどく小さく見えて。
ぎゅ、と膝を抱え込んで、痛み全部を自分の中で消化するように、ルークは縮こまる。
そっと紅の髪に触れれば、小さく体をふるわせて。
柔らかな髪をくしゃり、なでる。

「ルーク」

私ができるのは、この幼子の名前を呼んで、体にふれて、少しでも楽になるように薬を作ること。



この子に呼ばれる自分の名前は、心地よくて。
この子が私を頼ってくれる、その事実が愛しくて。

生きたい

全身で訴える願い。
なれば、叶えなければと思うのに。
ほかならぬ、この子自身がそれを拒む。
生きたいけれど、救いたい、と。
自分が多くの人を救えるならば、と。
ならば、自分が犠牲になろうと。
その犠牲の上、できあがった世界で、
どれほどの人が傷つくのか
理解だってしたうえで。

「ルーク、私は最後まで、一緒にいてもいい?」

すべてを手放そうとするこの子の、最後の枷であれたなら。
私の存在が、少しでもこの子の、生につながるならば。

、最後まで一緒にいて、」

か細い声でもたらされた願いに、ルークを抱きしめずにはいられなかった。



※※※※



「僕はこのままダアトに残りますね」

しっかりと自分の足で立つイオン。
瞳は確かな意志を持ち、発せられる言葉は強く。

「アニス、あなたはルークと共に」

導師守護役であるアニスが口を開くよりも早く、イオンは続けて。

「僕の代わりにを守ってください」

「でも、」

言い募るアニスにイオンは笑う。

「僕にはシンクがいますから」

「ちょっと何の話?」

あわてたように会話に入り込むシンク。
その肩をぽん、とたたくのはジェイドさん。

「レプリカである二人が障気中和のタイミングに共にいては、乖離する可能性が大きい」

「だから二人はお留守番でよろしくね」

引き継いだ私に、シンクの頬はひくひくと動く。

「お兄ちゃん、よろしくお願いします」

とどめとばかりにイオンからもたらされた言葉。
最近イオンに情を抱きつつある彼には効果覿面で。

「___、怪我なんかしたら怒るからね」

むすりとした表情を浮かべながらも帰ってきた承諾。

「アニス。をちゃんと守りなよ」

「シンクこそ。イオン様を傷つけたら許さないんだから」

さらにはアニスに言葉もかけて。
緑をまとう二人をダアトに残して、一行はレムの塔へと向かった。













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