ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 2-4
すれ違わなかったアニスに首を傾げながらも、皆で向かったイオンの部屋。
ルークたちが入っていったのを見送って、部屋の扉に背をつける。
部屋の前で、彼女を待つために。
ばたばたと音を立てて走ってきたアニスの瞳はぐらぐらと揺れていて。
私を目にした瞬間、彼女の足が、おそれるように止まった。
「アニス」
名前を呼べば怒られるのをいやがる子供のように一歩、後ずさって。
「・・・」
ふるえる声で名前を呼ばれた。
それに答えるように、ふわり、笑みを浮かべてみせる。
「アニス。大丈夫、大丈夫だから」
手を伸ばして、その小さな体をぎゅう、と一度だけ抱きしめる。
びくり、とふるえたけれど知らないふりをして、一度、二度背中をなでて解放する。
「大丈夫、絶対に助けてみせるから」
その言葉にアニスの顔がみるみるこわばって、泣きそうに、笑った。
「信じてるよ、」
強がりを精一杯かぶって見せて、笑う。
そのまま一度深呼吸をして、アニスはイオンの部屋の扉を開けた。
「イオン様イオン様!大変なんです!!」
言葉の羅列で反論をかわして、イオンの手をつかんで部屋から飛び出す。
ぽかん、とした表情を浮かべたルークたちは一拍後、すぐに行動を起こす。
アニスの後を追って走りだした彼らの最後尾について。
「、アスランから無事に二人は保護したって連絡がきたよ」
音もなく横にきたシンクがそう告げた。
彼へと頼んでいたこと。
それは、勝利への布石。
「で、どうするのさ」
「もちろん、助けるんだよ、シンクあなたの弟を」
言い続けているうちに、彼の中でイオンはもう兄弟みたいなものになったのだろう。
反論の声はなく。
代わりとばかりに私の腕をつかんで足を早めた。
譜陣を通って下におりたその瞬間、シンクが私を抱えてとびのく。
何事かと思えばトラウマの相手、リグレットが銃を両手にたっていて。
「行かせはしない」
静かに、そうつぶやく。
けれども、
「お願い!!イオン様を助けて!!」
金色のライガが突如、リグレットとの間に飛び込んでくる。
同時にその背中から桃色が飛び降りて。
ぎゅう、とすがりつかれる感覚。
泣きそうなアリエッタが私に飛びついてきたのだ。
「ルーク!!先にアニスを追いかけて!!」
ルークに、ジェイドさんに、先に行くように指示を出す。
少しの躊躇の後、それでも彼らは走り出してくれて。
行かせまいとするリグレットの前に、シンクとアリエッタと三人で立ちふさがる。
「イオンは、死なせない」
私の言葉にリグレットが眉を潜めて、シンクが、アリエッタが低く構えた。
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