ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 21









「ルーク、ちょっと二人で話したいな」

陛下との対面を終えた一行。
物言いたげな視線を向けてくるジェイドさんと、存在を確かめるようにそばにいたがるクレイ。
そんな二人をそのままに、今一番そばにいたいルークへと言葉を放てば恐る恐るという感じではあるが彼はうなずいてくれた。
陛下が用意してくれた別室で、きれいなメイドさんが入れてくれたお茶を前に、ルークと二人向かい合う。

、俺を責めないの・・・?」

短くなった紅色が、彼の心境を物語るようにうなだれる。
握りしめられた手が、かすかに震えている。
その姿は怒られるのをまつ子供みたいで、思わず笑いが漏れた。

「責める?どうして?」

「だって、俺が、あの街を・・・」

記憶に新しい崩落した街。
原因はこの幼子。

「じゃあ、責められるべきは私だよ」

そして周りの彼らだ。
だって、その要素はいくらでもあった。
一部は、気が付いてだっていた。
それを自分の罪と向き合うことを恐れて隠した。
正解への道筋を自らで閉ざした。

実行したのはルーク
それをそそのかしたのはヴァン
そして、それを見過ごしたのは私たち。

、」

驚いたように目を見開く君が、私の名前を呼ぶ君が、愛しい。
ルーク、私はあなたが相談できる存在になることができなかった。
怖くて、どうしたらいいのかわからなくて、たった一人信じることができたあの人にもたらされた言葉。
それを疑うことなどどうしてできようか。
そして、たった一人、信じた人に、裏切られた。
ルーク、君が一番つらかったときに
君が一番支えてほしかったときに
周りは、君を見限った。
私は、そこにいれなかった。
自らが引き起こした力に、恐れたルークを、力いっぱい抱きしめなければいけなかったのに。
彼のそばにいたのに、信用に足る存在になれなかった。

それは、私の罪だ。

「でもっ」

許さないでと、すがるように、ルークは声を張り上げた。

「じゃあ、ルーク、一つだけ、私と一緒に、罪を背負って」

ルークの言葉を遮るように、言葉がこぼれた。
そんなこと、言うつもりなんかなかったのに。
こんなこと言っちゃいけないってわかってたのに。

もう、耐え切れなかった。

ずっとずっと、一人で背負ってきたこの記憶。
それは、私一人じゃ重たすぎて。
こんなことしちゃいけないって知ってる。
こんなこと話すなんて馬鹿だってわかってる。
それでも、言わずにはいれなくて。
罰を請う君に、私と共に、荷物を背負ってもらおう。

「わたしは、しってるの」

声が、かすれる。
呼吸が乱れる。
心臓が大きく音を立てる。

「ルーク、あなたがこれから成し遂げることを」

私が今から口にするのは、この世界の未来そのものを覆すかもしれない。

「これからの世界を、知ってしまっているの」

それでも、もう耐え切れなかったから。
この記憶を、一人で背負い続けるのは。

「ルーク、わたしといっしょに、つみを、せおって」

にじんだ世界。
紅がゆがむ。
彼が、ルークが、近づいて、ぎゅう、とぬくもりに包まれた。

「おれがいっしょに、せおうから。は、おれをみすてないで」

意味は分かっていないだろうに、何のことか理解はできていないだろうに。
それでも、ルークは私を抱きしめた。
だから、私は、
ルークの背中に腕を回して、縋り付いた。

どうかお願いローレライ
罪を背負った、私たちがこの世界で生きることを許して。






















※※※
ルークが愛しい






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