ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 26









「もう、いなくなんなよ」

ルークが切実そうに言葉を紡ぐ。
かすかに握りしめられた手が、愛しい。

。あなたとまた無事に旅ができること、とてもうれしく思っています」

ふわり、それはそれはきれいにイオンがほほえんだ。
きゅん、ってするくらいにはかわいい。

!私もうれしいよ!」

アニスがふにゃり、笑う。
うう、癒される。

「本当に、いなくなったときは驚いたのよ?」

ティアが少し怒ったようにけれども心配を滲ませて告げる。
心配かけて、ごめんなさい。

「でも、また会えてよかった」

ガイが一定の距離を保ちながら私に告げる。
その距離感が懐かしい。

「六神将に連れて行かれるとは。自慢の逃げ足はどうしたんですか」

ジェイドが皮肉るように、眼鏡に触れる。
面目ない。

「あら、は足が速くて?」

ナタリア姫がほえほえとした空気を醸し出す。
綺麗な、人。

「逃げ足だけは、昔から早いよな」

クレイが懐かしむように、目を細める。
昔から変わっていないといいたいのか。
セントビナーに向かっている割には、重い空気ではなくて。
皆が私に言葉をくれる。

私の存在が、彼らにこんな影響を与えられることが、どうしようもなくうれしい。

足手まといだって、わかってるから。
戦うときには守られる存在にしかなれないって知ってるから。
イオンと一緒に、アニスの後ろ。
戦闘が始まった瞬間、ただのお荷物になる。
回復はティアとナタリアが。
速さを求めるこの場所では、薬草なんか役に立たないから。

それでも、一緒に来てほしいと、そう頼まれてしまったから。

それもジェイドさんに。
ならば私にできることを。

「イオン」

「どうしました?

戦闘を二人して眺めながらイオンを呼ぶ。
すぐに帰ってくる答えがうれしい。

「私、頑張るね。皆と一緒に笑える世界になれるように」

皆がちゃんと生き残れるように。
イオンが消えずに済むように
ルークとアッシュが、彼らでいられるように。
まだまだ効果が薄い薬たち。
それでも、前進はしているから。

「・・・僕も、頑張りますね」

私の発した言葉の中身。
わからないだろうにイオンはちゃんと返事をくれて。

「一緒に、頑張ろうね」

それにも、イオンは綺麗に笑ってくれた。
















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