ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 27
「ルーク!私は絶対に大丈夫だから、行って!!」
私の言葉に瞳を大きく揺らしながら、それでもルークはしっかりと頷いてくれた。
セントビナー。
その街にはもうすでに崩落の兆しが見えていて。
急きながら脱出の手配をすれど、全員を助けるには時間が足りなくて。
空気を読まないと評判のディストの邪魔もあり、気がつけば、街は半分落下しだしていた。
「!?」
「あー」
まあ、その落下しだした半分に物の見事に私はいたわけで。
今更とびうつれもしないので、あきらめてルークに声を放つ。
・・・気がつけばなぜかほとんど私は彼らと行動をともにはしていないな。
「マクガヴァンさん。私は薬を煎じることを生業にしているものです。病気の方などはいらっしゃいますか?」
まあ、どこにいても私は私にできることをするしかないけれど。
「、話してください」
空を飛ぶ、その世界を感動を持って体感するルーク達を後目に、ジェイドさんに手招きをされて。
彼らに声が届かない距離で話しかけられた。
「なにを、ですか?」
脈絡のないそれに思わず頭に疑問が浮かぶ。
「ルークが、無条件にあなたを信じる。その根拠を」
ぐさりと、心臓に鋭い物が刺さった。
この人は本当に、見逃してはくれないひとだ。
それでも、この人には話すわけには行かない。
ルークが、無条件に私を信じてくれる、そのわけ。
罪を、共に背負いあうと約束をしあって。
『私はこれからどうなるか、知っているの。でも、その未来がきてほしくはない。だから、お願い、ルーク。私一人じゃ帰られない結末だけど、あなたが一緒なら、世界は変わる』
だから、私を信じて。
その言葉に、ルークは、ふわりと笑ってくれた。
「ルークが私を信じてくれる理由を、あなたに話すつもりはありません」
きっと、あなたは信じてはくれない。
否、信じてほしくはない。
この世界が作られた物語だったってことを。
この世界の行く末を、私が知っているということを。
「私にも、あなたを無条件で信用する権利をいただけないのですか?」
そっと眼鏡に手を添えて、鋭く紅に射抜かれる。
私を、信じたいと、そんな言葉がこの人から言われるのはなんだかおかしくて。
思わず、頬が緩む。
私を見て、ジェイドさんの眉が顰められる。
何が言いたい、そう言いたげな瞳。
「だって、あなたにはいつだって私を疑ってかかってほしい。私だって、自分を信じられないのに。ルーク一人で十分なんです。私を、まっすぐに信じてくれる正直者は、ルークだけでいい」
私を疑ってくれる存在でいて。
「私を信じないで」
私の言葉にジェイドさんは困ったように、仕方がなさそうに、笑った。
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