ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 4
カイツールへと向かうための橋の消失により急遽フーブラス川へと進路を変更した一行。
戦闘能力皆無なためイオンと共に皆に囲まれながらの道中。
時折息を乱すイオンに昨日宿屋で作り上げた薬を渡す。
疲労回復効果のある薬草を砂糖やはちみつなどと混ぜて煮込みキャンディ状に仕上げたものだ。
「少しでも疲れが取れるから」
ふんわり笑ってお礼を言うイオンはなんというか、こう、女として負けた気分にさせられる。
うん。
すごくかわいい。
彼はすごく小さかったイメージがあったけれど、それでも並んでみると自分よりは高くて。
「はどんな薬でも作れるんですか?」
どことなく好奇心にあふれる瞳がわくわくとしながら問うてくる。
ああもう、かわいいわ。
思わずこちらまで笑顔になりながらそれらに答えていれば、どうやら川についたようで。
「水嵩が増しているから気を付けてください」
ジェイドさんの注意に皆がうなずく。
「イオン、気を付けてね?」
「も気を付けてくださいね?」
滑る石に足をかけてそっとイオンの手を取ればやさしい言葉。
それに笑い返してその手を引く。
が、
「わ、」
「!、」
思っていた以上にひどい足場は残念ながら体を支えてはくれず。
イオンを巻き込んではいけないと慌てて手を放し、そばにいたガイさんへとイオンを押し付ける。
そのまま足を踏み外しばしゃりと体が水に触れた。
「・・・何をやっているんですか」
あきれたような声と共に手を差し伸べられる。
見れば声色と同じ顔をしたジェイドさんがいるわけで。
そろそろと伸ばした手。
それをつかまれて思い切り引き寄せられて、今度はそのまま前のめりになる。
ぼすりと蒼い軍服に顔をうずめれば上からため息。
「ほら、さっさと進みますよ」
浮遊感と共に気が付けば目の下のほうに苦笑するガイさんとイオンの姿。
何があったのか理解できずにいれば耳元でジェイドさんの声。
「暴れないでくださいね。面倒なので」
「ジェイド、まるで荷物みたいだぞ・・・」
・・・どうやらジェイドさんによって荷物のように担ぎ上げられているようだ。
なんだか大変面目ない・・・。
無事、とは言えないながらも抜け出した川の向こう。
ようやっと地面に足を付ければふらり、少しだけ揺れる体。
それでもしっかりと地面を踏みしめてジェイドさんに礼の言葉を述べる。
と、ふわり、目の端に金色の何かが揺れた。
同時にすばやくイオンと私を囲むジェイドさんたち。
「ライガだ!」
唸り声と共に現れたのは数匹のライガ。
取り囲むように低く構え、こちらに狙いを定めている。
そして、後ろから現れたのは桃色の鮮やかな髪を持つ女の子。
「妖獣のアリエッタだ。見つかったか・・・」
なんかこう、突然現れたにもかかわらず、このメンバーはあまり慌ててはいないようだ。
外見の幼さに比例したような言葉づかい。
ふわりと髪を震わせながら発する言葉は母を、兄妹を思うやさしき思い。
「ママを殺したもん!」
そこであれ、と思ったこと。
そういえばあのライガクイーンはジェイドによって連れてかれたような気が。
ちらりとジェイドさんを見れば彼もこちらを見ていて。
何も言うなというように人差し指を口元にたてたので何も言わずにおとなしくすることにした。
「あなたたちを、殺しますっ!!」
アリエッタが叫んだその瞬間、ぐらり、世界が揺れた。
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