ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 51









「ほら、またおいて行かれてる」

その言葉とともに現れた緑色。
嘲るように笑いながら、彼は言う。

「連れてってあげようか、あいつらのところに」

前のことなどなかったように彼は現れて、そして、その手を伸ばしてきた。
差し出されたその手を、今度こそとらないわけがなかった。



ユリアシティでの平和協定の後、障気を止めるための作戦にでる彼ら。
彼らは皆、打ち合わせでもしたように私に告げた。

は、ここにいて」

ティアが、真剣な表情で。

「あなたの技術は、世界を救うものです」

イオンが、穏やかに。

「危ないところにこないでくれ」

心配そうにガイが。

「ここは、私たちを信じてください」

優しくお姫様が。

「お願い、、ここでまってて」

泣きそうにルークが

「私たちに任せてよ!」

笑顔でアニスが

「おまえがここにいてくれるなら、俺たちは戻ってくるから」

無表情でクレイが
そして、

「陛下と共に、いてください」

ジェイドさんが。
陛下の元に預けられて、ただ、皆を見送って。

「心配するな。あいつらはきっとうまくやる」

陛下が気遣うように私の頭をなでてくれた。
違うんです。
心配しているのももちろんあるけれど、そうじゃないんです。
彼らが、みんながつらいであろうあのときに、また私一人だけ共にあれないことが、苦しいんです。

そばにいなければ、優しい彼らを、抱きしめることだって、できない。

なんどもなんども、なだめるように陛下はなでてくる。
イヤなんかじゃなくて、落ち着くものだから、そのままその温もりを甘んじて受けて。

。信じて待っていてやれ」

「あいつらはそうすることで強くなる」

「特にな」

楽しそうに陛下は私をみた。

「ジェイドは、おまえが信じていればたとえ死んでも戻ってくるさ」



陛下と共にグランコクマへと帰ることになって。
ユリアシティで眠る最後のよる。

閉鎖されたこの街も見納めかと、一人、歩く。
そして___



私は彼の手を、今度こそ、迷いなくとった。










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