ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 52









「ねえ、シンク。考えてくれた?」

彼の目的はベルケンドにあるタルタロス。
そこで障気を止める為に使われるそれに、私とシンクは乗り込んで隠れていて。
ひっそりと、声を潜めて問えば、彼は怪訝そうにこちらをみる。
シンクは、私の前だと仮面をしなくなった。
本人曰く、やっぱり邪魔なものは邪魔らしい。

「私と一緒に来る、ってはなし」

「僕に利点が感じられない」

きっぱりと、それ以上を許さないとばかりに彼は告げる。
でも、はっきりとした拒否の言葉では、ない。
それに、おもわずほおがゆるんだ。

「やっぱり、一緒においでよ。シンク」

ため息をつきながら、シンクは私の前に座り直す。

「何で僕を誘うのさ」

彼の言葉への返事なんて決まっている。

「私はシンクがほしいから」

はあ?と言わんばかりの顔でシンクが私から距離をとった。
困った。
うまく伝わらない。
少し、言い方を変えてみようか。

「世界を変える旅をする彼らと、共にいたいから。だから、私は私を守る武器がほしい」

あざけるように、傷ついたように、シンクは笑う。

「僕を道具のように使おうと?」

「違うよ。シンク。逆だよ。私は、あなたの居場所になりたいんだ。でも、それで納得してくれないならば、私はあなたという武器がほしい、とでも理由を作るよ。私があなたの存在理由になりたい」

理解ができない、そんな表情を浮かべるシンクが、あまりにも幼く見えて。
飾らない言葉が、口からこぼれる。

「でもそれよりも、私のそばで、家族みたいに生きようよ」

迷う表情。
それは、期待してもいい?
ねえ、シンク。
簡単に伝えるよ。

「居場所をあげるから、力をちょうだい」

「そっちの方が、シンプルでいいよ」

少しだけ、楽しそうに、シンクは笑った。












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