ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 53
「シンク、一緒にくるっていってくれたんじゃないの?!」
「ぼくはまだうなずいてないよ」
タルタロスの甲板。
かかれた譜陣をあっさりと消したシンク。
それは確か、消しちゃいけない奴だ。
あわてて止めようとしたけれど、遅すぎて。
「ちょ、シンク!」
ちらり、デッキの方をみた後、なぜか姿を消したシンク。
呼び止めるためにあげた言葉は無視をされて。
「何事です!!」
ジェイドさんたちがそこから姿を現した。
「譜陣が消されている?!」
「!どうしてここに?!」
あがる驚きの声と疑惑の視線。
「ええと、お邪魔してます?」
伝える言葉が見つからず、そんなことを発すれば、なぜかルークが、ガイが、皆が、力が抜けたようにため息をついて。
「・・・」
アニスから白い目で見られた。
ひどい!
「ここに書いてあった譜陣を消したのはあなたですか」
固い声。
疑いしか含まないジェイドさんの声にあわてて首を振る。
けれど否定の言葉を発したのは___
「消したのは僕だよ」
柔らかな音を立てて着地したシンクは仮面の裏であざ笑った。
戦闘には参加できないから、いつものように、イオンと共に彼らの後ろに下がって。
シンクと彼らの攻防を見守る。
「、どうしてここに・・・?」
イオンがそっと問いかける。
「一緒に、いたかったから」
イオンは困った顔をしているのだろう。
それをみるのがはばかられて、イオンに目を向けずに返事をする。
「ごめん、わかってるよ。この作戦がもし失敗してしまったら、私の薬が頼りになるって」
私しか作れない、障気中和の薬。
つまり、私は死んではいけない。
でも、それでも、
「ごめんね、一緒にいたかったんだ」
イオンは、なにも言わなかったけれど、優しく私の手を握ってくれた。
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