ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 54
カラリ
落ちる仮面。
現れる素顔。
導師とうり二つの顔。
皆が息をのむ気配。
でも、確かにそれは、シンクの顔。
イオンとは違う、シンクという一人の人間。
あかされる真実と、レプリカについて。
さげすむようにシンクは言葉を紡ぐ。
罪に苛まれるようにジェイドが口を閉ざす。
イオンが、一緒だと叫んで、
でも、その言葉はシンクには届かない。
「必要とされるレプリカに、僕の気持ちが分かるものか!!」
違うよ、違う
シンク、気がついて、
「シンク!!!」
声の限り、叫ぶ。
あなたの名前を。
小さく、体がふるえて、彼が、確かにこちらをみた。
おねがい、お願い、私を信じて。
「シンク!私、言ったよ!何回も言った!!私にはシンクが必要だって!!」
揺れる瞳、迷う心。
揺れるぐらいなら、こちらに傾いてよ。
私から、逃げるように、後ずさるように、シンクは下がる。
だめだよ、それ以上下がったら___!
「シンク!!」
イオンの声。
それにはじかれるように、私は、その手を、つかんだ。
「!?」
確かに、落ちていくその手を、つかめた。
腕が、バカみたいにいたい。
ヴァンから受けた刀傷が、ひどくうずく。
でも、この手を離す気は、さらさらない。
「なにするのさ!」
シンクの声に、ひっしでこたえる。
「あなたがあなたの命を捨てるなら、あなたの命を私にちょうだい!」
捨てられたものを、ひろうのは、自由だよね?
シンクの瞳が、泣きそうにゆがむ。
がくり、落ちそうになる体を、温もりがつかむ。
「ばか、おまえの腕で持ち上げられるかよ!」
クレイが、私の体を支えてくれて。
ガイが、シンクの腕を一緒に引っ張りあげてくれて。
「なんでっ、」
苦しそうに言葉を発するシンクに向けて、
パシリ
乾いた音を響かせる。
皆が呆然とする中で、私はただ、シンクの頬をはたいていた。
目を瞬かせてこちらを凝視するシンクの胸ぐらをつかんで、大きく揺する。
手が赤く染まっていたけれど、そんなこと関係はなくて。
「何で捨てるの!?私言ったよね!!シンクが、ほしいって!!」
私の手を止めることもなく、シンクはただ揺らされるがままで。
「私を、信じてよ!!」
それでも返事をくれないならば、私は、あなたを、
「大切にするから!シンクが捨てるって言うなら、私が大切にするから!」
「シンクがいらないっていうなら、私が必要とするから!!」
「私が居場所になるから、私と一緒にいてよ!!」
「私と、家族になってよ!!」
その細いからだにすがりつく。
お願い、私を、一人にしないで。
「ごめん」
小さく、でも確かに聞こえた謝罪の言葉。
そおっと、壊れものにふれるみたいに、腕が回されて。
「一緒に、いてもいいの?」
まだ、確信が持てないのか、そおっと問いかけられる。
ばか、ばかっ、ばかっ!
「私と一緒にいなさいって、私があなたの居場所になるって、なんかい言わせるの!」
ぎゅうぎゅうと、幼子にするように、その体を力一杯抱きしめる。
まだ信じられずにいる彼に諭すように、理解させるように
「私と一緒にいることが、あなたの生まれてきた理由だと思いなさい!」
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