ドリーム小説

逃げ脚だけは一流です 59









ザレッホ後ベルケンド。
一度ティアが離脱すれど、ルークがしっかりとつれて帰ってきてくれた。
ティアはワイヨン洞窟にてヴァンの説得に当たっていたらしい。
結果はそぐわなかったようだけど。
そして、

「兄さん。サフィールとの約束を破ったの?」

ケテルベルク、ジェイドさんの生まれ育った町。
そこでジェイドさんの妹兼、知事であるネフリーさんからもたらされたのはそんな言葉。
そういえば、と向かった宿屋。
すやすやと睡眠をとるディストがそこにいて。
それはそれは幸せそうな寝顔である。
すぐさま攻撃を放とうとした
ジェイドさんを宥めて外へと放り出す。

「ジェイドさん、薬、一応作るんで少し待ってください」

その言葉にしぶしぶとではあるがうなずいて彼は外で待機を始めた。
扉が閉まったのを見届けて振り返れば、ディストがぼんやりとベッドの上に起きあがってこちらを見ていた。

「ディスト」

呼べば彼は表情が抜け落ちたように一つ、瞬きを落として見せた。



乾いた声。
長時間水分を取っていなかったのだろう。
水道の水をくんで渡してやればお礼とともに受け取るディスト。
けれどそれに口を付けることはなく、ただぼんやりとこちらを見つめていて。

「ジェイドは素直に言ったところでだめに決まってるんです」

ぽつり、つぶやかれた言葉。
常ではあり得ない静かな声。
けれどももう知っている。
それが彼なのだと。
取り出した薬を混ぜ合わせながら先を促す。

「ですから・・・少しでも衝撃が浅い方がいいでしょう?」

それはあの手紙のことだろうか、ぼんやりと思う。
遠回しにあの場所にあることを示して、それでもできればきてほしい、そう願う不器用な手紙。
けれども確かに彼の正直な想い。

「ディストはジェイドさんが大好きなんですね」

少し前に彼に発した言葉を再びことのはにのせて伝える。
そうすれば彼は困ったようにではあるけれどはにかんでくれるから。
薬を渡すのと同時に彼を見れば、とてもとても穏やかな表情がそこにはあって。

も、ジェイドのこと、大好きでしょう」

疑問ではなくて確定に近い声。
気づかれていたのか、と動揺するよりも先に笑いがこみ上げた。

「ジェイドさん大好き同盟でも組みますか?」

こぼれ落ちる笑みそのままに告げれば、ディストも愉しそうに頬をゆるめて。

「いいですね。では、ジェイド大好き同盟、ここに結成と言うことで」

ぱちり、手をたたきあって共犯者のように笑った。













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