ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 61
知っている。
彼が私をおいて行きたがっていることなんて。
わかってる。
みんなが私にここにいてほしいと思ってることなんて。
理解している。
私の作り出す薬はこれから先も多くの人を助けるであろうことも。
それでも、譲れないものだってあるんだ。
「ジェイドさん。私は着いていきますからね」
たとえあなたがなにを言おうと。
「私はちゃんと自分のみを守るすべを手に入れました」
私は私の武器を手に入れた。
「もう前の私じゃありません」
おいて行かれるなんて、やだ。
なにも知らないままでみんながきずついていくのはイヤだ。
「ま、たった一人おいていってまた誰かにつれて行かれても困りますしね」
折れてくれたとはいえ、非常に不本意そうだ。
けれども、私は確かに許可をもぎ取った。
「シンク、よろしくね」
そう言えば仕方がないとばかりに彼は微笑む。
「まったく、困ったお姉ちゃんだね」
手を伸ばして、お互いに握りあって、ふにゃり、笑って見せた。
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