ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 69
蒼に囲まれた謁見の間。
金色の王様を始め、様々な重鎮たちが集まる今。
その前で、自分を御落胤だと告げる一人の少年。
私は陛下とジェイドさんに許しを得て、今、この場所にともにいた。
そして、事態は大きく動く。
「ピオニー陛下!!」
私には彼を守るだけの力も、能力も、なにもないのに。
思わず、体が勝手に動いて、その金色の王に手を伸ばしていた。
腕の中に感じる、大事な王の温もり。
驚いたように目が見開かれるのをみて、頬がゆるんだ。
あなたを守るには力不足ではあるけれど、それでも、あなたを守ってみたいと想うほどには、あなたが大切なんです。
民を想うあなたを、私だって守りたい。
「っ!?」
腕に痛みが走る。
鈍いそれは、切り裂かれた痛み。
でも、この人を守れるなら惜しくはない。
二人そろって、地面に伏す。
痛みをこらえながら、ぺたぺたと彼の体に増れる。
どこもけがをしていないことを確認して、少しだけ息を吐く。
「お前っ、けがっ!」
彼の手が乱暴に私の腕をつかむ。
痛みに顔をしかめれば、彼の顔色は悪くなって。
「力もないのに無理をするなバカ!!」
彼に叱られるのだって、生きていてこそだと想うと、嬉しい。
思わず笑えばぺしりと頭を叩かれた。
ゆるり、自分の腕をみれば結構な出血で。
邪魔だな、そんな思いを抱きながらそっとその箇所にふれる、と
「・・・え?」
ふわり、空気が、生まれて。
優しくその場所を包み込んだ。
「・・・消えた?」
陛下の驚きの声。
でも、自分でも起こっていることを理解できなくて。
ゆっくりと顔を上げて陛下をみれば彼も同じようにこちらをみていて。
「、おまえ__」
「天高満つるところ我は有り」
陛下の声は、冷静さを欠いた一人の男の声によって遮られた。
「げっ!ジェイドあいつ!」
陛下の視線を追えば、そこには手を天に向け、言霊を紡ぐ彼の姿。
「黄泉の門開くところに汝有り、出でよ神の雷」
瞳から読みとれる怒りの色。
「これで終わりです!」
終わりへと向かう、最後の一言が紡がれる、その先
「あんたたち、無事に帰れると思わないでよね」
「っ、シンク!」
緑の髪を艶やかに揺らして、非情に笑う、弟の姿。
「これでとどめだ!はあああぁぁ…!」
彼の掌が地面へと叩きつけられる。
口ずさむ旋律は、私の知っている彼最大の術。
「アカシック・トーメント!」
紡がれるのは、彼の最大の術。
インディグネイション!」
放たれた奥義は、この場所にいる敵と認識された人たちすべてを巻き込んで。
満足そうな顔で笑う二人の向こうで。
ようやっと事態は収束した
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