ドリーム小説
逃げ脚だけは一流です 71
「・・・」
無言でシンクが私にすがりつく。
「、傷口を見せなさい」
無表情で促されるそれに逆らうことなどできはせず。
おとなしく手を差し出す。
そうすれば自分よりも幾分かひんやりとした手がふれて。
「・・・確かに傷が消えていますね」
奥義をぶっ放して、すぐさま陛下と私の元へと駆け寄ってきたジェイドさん。
私が腕を怪我したことを、さらにはなぜかその傷が治ったことを、陛下はあっさり口にして。
私の腕をみながら少しだけ考えたあと、彼は近くにいた兵士に指示を出す。
「・・・ディストをここに」
つれてこられたディストは体に電気をまとい、見事なまでにジェイドさんの奥義を身に受けていて。
「」
状況はあまり理解できないけれど、促されていることはわかって。
手を、ディストへとのばす。
ひどい傷。
でも、なんとなく、感じる。
どうすれば、いいのか。
「癒して」
小さくつぶやいたそれに、空気が、光が反応を見せた。
一度大きく輝いたその場所。
消えた光の奥、傷口がなくなっていて。
「・・・ってば、いつのまにこんなの使えるようになったの?」
首を傾げて問うアニスに私は同じように首を傾げるしかできなかった。
「、あなたの体に第七音素が注入されています」
ジェイドさんによる精密検査が行われ、告げられた言葉はそれだった。
どうして。
その言葉は、口にする前に自分の中で昇華する。
だって、私は知っていた。
きっと、あのとき。
あの場所で。
あの人が、ヴァンが。
私に傷を付けたとき。
私にそそぎ込まれたちから。
それが、きっと、第七音素
長く寝込んだのもきっとそれが原因。
あのときの検査ででなかったのは、私の体になじんでいなかったのだろう。
そっと手を握りしめる。
あのときとなにも変わらない手。
でも、この体には確かに力が眠っていて。
「これで、少しでも、みんなの力になれるんだね」
小さくつぶやいた言葉に、ジェイドさんが小さくため息をついた。
「お願いですから、無理だけはしないでください」
陛下がくしゃりと頭をなでてくれて。
シンクがそっと私の手を握る。
ぎゅう、とアニスが私に抱きついてきて。
ディストのまっすぐな瞳に小さく笑って見せた。
「みんなを、守るから」
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