ドリーム小説
記憶を辿って 1 そうして記憶は騙された
「作!食堂はあっちだぞ!!」
「左門、ちがう、こっちだ。」
「〜〜〜〜っお前ら!いい加減にしやがれ!!」
静か、とも言えない学園に響く三つの声。
それは慣れたものにはまたか、という感覚を呼び起こさせ、
まだ新しく入ったばかりの後輩たちには何事かと思わせる。
「また、やってる。」
屋根の上から声の発信源である三人組を眺めていたはぽつりつぶやきその音の発信源を眺める。
三つの黄緑はあっちこっちうろうろうろうろ。
それをぼおっと見るのがは好きだった。
その空間に入ることを望みはしない。
ただ見ているだけ。
その感触が好きだった。
ずっと、そのままでいてほしいと、この戦乱の世に不変を求めたくなるほど。
ずっと、そのままであるのだと、悪戯に思わせるほどの。
そう、ただ見ていただけの彼女には彼らの行く先など知らなかったけれど。
それでも、こんなものは望んでいなかった。
「俺は向こうが運動場だと思うんだけど。」
「ああ、そうか。それならお前は向こうに行けや。」
その場所は決まっていたのに
こんなにも平和な世界で、
「先生〜神崎君がいません。」
「またか・・・おい、学級委員長探して来い。」
「また僕ですか?まったく神崎は・・・」
その言葉を言っていいのは彼だけだったのに
あんなにも綺麗な関係で、
「なあ、富松。お前それ何持ってんだ?」
「・・・俺にもわかんねえよ。」
無意識に縄を持ってるくらいなら思い出してよ
それがこんな形になるなんて。
「捕まえとかなきゃいけないものでもあんの?」
「そんなもん、どこにもねえよ」
なんて世界は残酷なのでしょうか。
そう、彼らはもう共にはいなかったのです。
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