ドリーム小説









 魔法10


「きょーじゅ、ひと、たくさん、です。」


今日から新学期、らしい。
今までまったく気配の感じられなかったこの学校にたくさんの気配を感じる。
それは、私にとって新鮮で、興味深いことだ。



、いいか。明日から新学期である。校長たちと話した結果、お前のことは秘密にしておくことになった。
この学校には今までと比べ物にならない人数が来る。
今までのように校内をうろうろと徘徊するのは禁止だ。もう一つ。校内で極力生徒に会うな。
お前のことが知れたら、いろいろとややこしい。
・・・ここから出るなといいたいが、お前のことだいつの間にかいなくなったりするのだろう。
昼はここからでるな。かわりに夜、消灯時間後は何をしてもいい。』

英語ではなく日本語で告げられたそれらにはじめはむっとしたけど、今、この人数を見てからでは納得できた。
微かに聞こえる喧騒はどれもの耳に言葉として届かない。
彼らに話しかけたところで、話しかけられたところで、私には答える術が無い。
日常会話ですら危うい状態なのに、どうしようもない。

「・・・もういいだろう。」
「・・・えと・・・はい、です。」

ここは、きょーじゅの地下室ではなく学校が見渡せる場所。ごねる私に溜息をつきつれてきてくれたのだ。
コンパスの違いか、きょーじゅの歩く早さに、私は必死でついていく。

おとなしくしていろといわれた(と思う。)ので、きょーじゅの部屋(寝室ではなく執務室)のソファアに腰を下ろしくつろぐ。

遠くから聞こえる騒がしさに、きょーじゅもあの中にいるのだと思った。
・・・にあわなそうだ。
それどころか、騒がしいのが嫌いな人だから眉間に皺を寄せて、苦虫を噛み潰すような顔をしているのだろうと、容易に想像できる。
簡単に浮かんできた光景にふにゃり、笑う。
と、一際大きな歓声が聞こえたと思ったら、目の前に湯気を立て、とてもおいしそうな匂いをかもし出すたくさんの料理が出てきた。
『・・・これ食べてもいい、の?』
呟いたところで返事は返ってこない。
勝手にいいのだろうと解釈し、私はその料理に手を伸ばした。

『おいしい。』

ここでの料理はとてもおいしい。
ただ日本食に焦がれてもいるのだが。
誰が作っているのかは残念ながら知らないのだが、シェフにあったら、御礼を言おう。
ついでにキッチンを使わせてもらえないか交渉もしてみよう。 そんなことを考えて目の前の料理を口に運び続ける。

料理がデザートに変わる。
甘い匂いに、綺麗な見た目に頬が緩む。
ぱくりと口に入れるごとに、口内に広がる甘さに思わず感嘆の溜息を漏らす。
甘いものは大好物だ。
三食甘いものでもいける。
それくらい好きだ。




『おいしかった・・・。ごちそうさまでした。』

目の前から消え失せた料理の数々に、手を合わせお辞儀をする。
きょーじゅたちがやらなくてもこれは私にとって習慣なので。

外が先ほどよりも騒がしい。
どうなっているのか気にはなるのだが、きょーじゅに出るなといわれている以上、どうしようもない。
おなかが一杯のせいか、ゆるりと訪れる眠たさに抗うこともせず、私は眠りについた。






 くらい
   
   くらい
  
     くらい


いちめんのやみ

 うえもなく 

     したもなく

そこにあるのはやみばかり

たっているのかもわからないそこに

わたしはいて

 なにかがこわくて

    なにかにおびえて

なにかがわたしを

  つ か ま え よ う と し て い る


わたしはにげる

        それはゆっくりとおいかけてくる

  
うしろをみてはいけない

   それはけいこく


にげる
  
   にげる

      にげる


なにかがわたしに




   ふ    れ    た   





『うわあああああああああぁあぁあぁぁっ』



!?!!おきろ!!!」

何かが腕を掴んでいる。
その感覚が怖くて、怖くて、必死でそれから逃れようと身をよじる。
誰かが何かを言っているのが聞こえるが、それは情報として頭の中に入ってはこない。

『いやだいやだいやだいやだいやだぁぁぁぁぁぁぁ』

    ふわり

温もりが体を包む。

薬品の濃い匂いがする。

それは最近慣れてきた匂い。

『おちつけ、。』

それは知っている声。

体の力が抜けた。
抱きしめられたままきょーじゅにもたれかかる。

『・・・こわいゆめ。だれもいない。真っ暗な闇。誰かが私を捕まえようとしてる・・・。』

『・・・。』

きょーじゅは何も答えない。
けど、決して私を突き放したりはしない。

おねがいだから、もう少し、このままで。


眠りが再び訪れる。

その温もりを抱えたまま







    こわいゆめ



でも、ここならみない。       











※※※
時間軸的には夏休みに城にきて、二か月くらいすぎたくらい。


back/ next
戻る