ドリーム小説







魔法9


「・・・何をやっているんだお前は・・・。」

涙目で廊下を徘徊していたら聞こえた音。
意味は解らないがそれは私に向けられたものだと解った。
『・・・きょーじゅー』
その低音は私を落ち着かせる。
その声の主を視界に入れた瞬間その体に飛びついた。

始めのうちは慌てていたきょーじゅだがことあるごとに私が抱きつくものだからなれてしまったらしい。
溜息をつきながらも剥がそうとはしない。
それがなんとなく嬉しくてローブをさらに強く握る。
残念ながら、私の背が小さくいのできょーじゅに抱きつくといってもきょーじゅの腹辺りに顔がある。
その上腕も短いせいで背中まで腕は回らない。

「一体どうしたんだ。」
『探しに来てくれたの?』
「・・・」

・・・言葉の壁はやはり難しい。
再び溜息を吐ききょーじゅは杖を自分に向けた。

『何故、部屋から出た。』
『暇だった。』
『・・・では何故言わなかった。』
『きょーじゅいなかった。』
『・・・・・・泣いていた理由は。』
『おばけ怖い。』

見詰め合うこと数十秒。
身長が全然違うので見上げるのが大変だ。
(・・・背が高いのずるい。)
首が痛くなってきたのでそんなことを思う。
と、先に目線を外したのはきょーじゅだった。
(・・・勝った。)
何に?と自分の思考に突っ込む。

視線を合わさないままきょーじゅは口を開いた。
『これから暇なときは言え。できる範囲で付き合ってやろう。』
淡々と話されるそれに私は一瞬考えるのが遅れた。
『外に行くときも言え。いつの間にかいなられては、探すのも面倒だ。』
不機嫌そうな声色。
でも探してくれる気はあるんだと、ほんのり心があったまる。
『・・・幽霊は・・・慣れろ。』
『えっ、ちょ、最後投げやり?』
それはないんじゃ、とは思いながらもそれしかないみたいで。

『・・・解った。』

しぶしぶという感じで頷いた私の頭にぽんと温かい手の感覚。

ふにゃりと緩む顔を見られたくなくてローブに顔を押し付けた。





そむける顔は、言い馴れないことを言うせいで。
合わせない目は、照れてるからで。
頭にのった手がぎこちないのは慣れてないからで。

 でもそれはどれもあたたかくくて

忙しい時期だといっていたのにもかかわらず、ここに来てくれたのは探してくれたのであろう。
突然来た私をめんどくさそうにしていても、どこかで気にかけていてくれてる心優しい人。


口で言うのははずかしいから。



   ありがとう




そっと胸の中だけで。













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