ドリーム小説
魔法100
「ルーナ!」
ふわふわの銀色の髪。
踊るような足取りで、彼女は廊下を進む。
私の声に緩やかに振り向いて、彼女はふんわりとほほえんだ。
「」
彼女に名前を呼ばれると、自分の名前なのにいつもと違って優しい色に染まる気がする。
彼女につられてゆるんだ頬。
目の前にやってきた彼女がこてり、と首を傾けた。
「久しぶりだね。・・・なにがあったの?」
挨拶を、返そうとしたけれど、それより先に言葉を続けられて。
浮かべていた笑みが、固まった。
ルーナは本当に不思議な子だと、そう思う。
なにも知らない顔をして、それなのに簡単に何かに気づく。
今だって、何かあったの、ではなく。
なにがあったの?と問いかけられた。
簡単に私の気がかりにたどり着く。
じわり、胸の中の焦燥が簡単に頭をもたげて。
それを、彼女が穏やかに待つものだから。
そっと手を、のばしてしまった。
「教授が、最近私を避けています。」
決して人相がいいとはいえない教授が脳裏に浮かぶ。
足早に廊下を進む彼は、最近こちらを振り向くことが減った。
今までであれば時折振り向いて足の遅い私を待ってくれていたのに。
彼の授業のお手伝いをするようになってから、朝も昼も夜も、基本的には同じ行動をしていた。
なのに最近、どことなく、さりげなくではあれど、距離を取られているように思う。
否、思うではない。
実感しているのだ。
今までであれば1日のうち最低1回は教授と一緒にご飯を食べていたのに。
昨日なんか1回も一緒に食べていない。
「教授は私を嫌いになってしまったんでしょうか、」
ずっと思っていたことを、口にした瞬間、ぶわり、感情が高ぶってしまって。
目の前がにじんだ。
「本当に、は教授が好きなんだね。」
そっと頬にルーナの手が添えられた。
上を向くように誘導されて、従えば目の前にきれいなルーナの瞳があって。
「ねえ。それはいつから?」
ルーナの質問に、記憶をたどる。
けれど、それは明確にいつから、というのはないのだ。
ゆっくりと、けれど着実に、距離を、はかられるようにはなされて。
ああ、でも、一つだけ。
決定打があった、気がする。
「ロンを、叩いた日」
一番の友であるはずの、ハリーを疑うロンに、思わず手を振りあげた日。
あの日から、教授の避け方が顕著になった気が、する。
「あの日、私も大広間にいたわ。が私よりも年上って聞いて、びっくりしたもん。」
そういったあと、ルーナはぴたり、動きを止めた。
「ねえ、。」
再度呼ばれる。
先を促せば、ルーナは私を至近距離で見つめながら言葉を続けた。
「の年齢って、教授も知らなかった?」
「・・・たぶん?」
なんでそんなことを聞かれたのかわからなくてこてん、と首を傾けた。
「じゃあ、きっとそれだね。」
謎は解けた、とばかりにルーナはかわいらしくほほえんだ。
全くもって意味が分からない。
なのにルーナは笑う。
「きっと、が思っていた以上にお姉さんで、びっくりしちゃったんだよ。」
それはそれはおもしろそうにルーナは笑い続けて
それって、もしかして、
少しでも、子供じゃなくて、女性だって、思ってもらえたってこと?
でも本当は知っている。それは関係がないって。
ルーナの笑顔を曇らせたくなくて、彼女にそっと抱きついた。
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