ドリーム小説
魔法104
「おはなししましょう、スネイプ先生。」
本日最後の授業。
不在のこのときを見計らったかのように、その男はやってきて。
そしてにっこりと笑ってそう言った。
睦月昴
私にすがる少女と唯一同じ存在。
その男に持つ認識はそれだけで。
しぶしぶと薬学教室へ入れ、話を促す。
「スネイプ先生は俺とあの子のこと、知ってるんでしょう?」
疑問文のはずのそれは、しかし質問ではなく。
浮かべる笑みはその裏を隠す。
あの子
それが示す少女が、ふわり、記憶の中わらって。
「俺とあの子が、この世界では異端だと。」
答えぬままでいれば、その男はさらに笑みを深めて。
「___知っている。」
それがどうした。
そんな意味を込めてにらみつけるが、その男は笑みを崩すことはなく。
我が生徒ではない、つまり減点も罰則もこの男には通じない。
それに苛立ちを感じながらも先を促す。
「用事はそれだけかね?___我輩は暇ではない」
さっさと解放しろ。
そう続けるつもりだったというのに。
「俺はね、先生。」
私の言葉を簡単に遮って、男は続けた。
「連れてこられたんだ。」
ぴたり、思考が、とまる。
それが示す意味がわからないほど無能ではない。
「この世界でもっとも影響力を持つであろう、男に」
ゆっくりと、言葉をかみしめるかのように。
「そのときにね、言われたんです。」
じわり、腕が、存在感を示すかのように熱を持つ。
「今度こそ、ってね。」
しっていた。
あの子が、誰に捕まりそうだったのかも。
わかっていた。
あの子が、必死に逃げている存在のことも。
理解していた。
あの子が闇をおそれる理由を。
「ねえ、一番目は、誰だったのかな?」
主と仰ぐ、帝王
消えない楔はまだ、心臓に突き刺さったまま。
その人物が、あの子を望むのであれば。
私は差し出す以外の方法を持たない。
「お前がここにいるのは、」
「あいつの望みですよ。」
私の言葉に間髪入れずに返事はかえって。
「ねえ、先生。」
軽い口調で、男は言う。
「あの子が、大事?」
大事かどうか。
その質問には肯定以外の返事を私は持たない。
それでもそれを口にするわけには行かなくて。
「沈黙は肯定、って言葉、知ってます?」
男はわらう、わらう。
「俺はね、別になにがどうなろうが、全く興味ないんです。」
ぐらり、空気がゆれる。
肌で感じる、魔力の高さ。
あの帝王が求めた、その理由。
「でもね、あの子にこの世界で出会っちゃったから。」
魔法すら使えない、なれど、魔法が効かない特殊な体質。。
「あの子が泣くのはみたくない」
まっすぐと、黒い、あの子に似た瞳で。
あの子とは、全く違う感情を宿して。
「なあ、先生はあの子をどうしたいの?」
その疑問の答えは、私が知りたい。
「どっちかにしてよ。うけいれるにしても、突き放すにしても。」
ぴん、と目の前に指が突き立てられる。
それは杖をふるうときのように。
「俺がここで望まれているのは、あの英雄に関することだけ。」
ゆるり、それが動けば、あたりに光が散って。
杖がなくても魔法が使えるという、異端。
杖があろうが、魔法が使えず、さらには魔法すらきかないと言う異端。
「先生のことも、あのこのことも、今はなにも関係ない。」
男の指が、罪の証へと向けられる。
じわり、上る痛みを感じながらも男を見つめて。
「どっちでもいいからさあ、早くちゃんを、自由にしてあげてよ。」
男は困ったように笑った。
今までみた中で一番人間らしい笑みで、
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