ドリーム小説
魔法106
「教授」
探し回ってようやっと見つけたその人は、あまり似合わない中庭にいた。
呼びかけてみたけれど、やっぱり反応はしてもらえなくて、ぐ、と胸が詰まる。
それでも、今を逃せば先がないとわかってもいたから。
無言で歩きだそうとした彼のローブをあわててつかむ。
「教授」
ぐい、と引かれたローブに気づいたのだろう。
不機嫌そうな瞳がこちらに向けられて、そして息をのむ音が、聞こえた。
珍しくも眉間から皺が消失したその表情に今まで感じていた怒りが、ふわり、消える。
「教授どうでしょうか。今日の私は。」
まっすぐに瞳を見つめて問いかければ、彼の瞳はさまよって。
「・・・似合っている」
小さな、本当に小さな声でもたらされたそれに、どうしようもないくらいに泣きたくなった
「教授、」
言いたいことは、たくさんあった。
でも、それらは遠慮するようにのどの奥に消えていって。
そんななか、するりと、口からでた言葉は
「私は教授と一緒がいいんです。」
そんな見当違いのものだった。
「教授が私を遠ざける理由が、私のためだというなれば」
それをきっかけに、伝えたい想いはあふれだして。
「私があなたから離れる必要が、どこにありますか?」
私の口を媒介にあなたに向かう。
好きです、好き。
誰よりも、なによりも。
あなたのことが。
それでも、やっぱり願うのは
「セブルスさん、私を側に置いてください。」
あなたのそばに、ありたい。
back/
next
戻る