ドリーム小説
魔法111
が、薬学教授とうまくいったらしい。
言葉で確認はしなかったけれど、それでも柔らかな笑みに、今までにない落ち着いた雰囲気に、
どうしようもなく切なくなった。
彼女の想いがかなうのはうれしいけれど、それが僕らに向けられたものじゃないことが、
悔しくて、やるせなくて。
「すきだよ」
その言葉は、彼女には伝わらない。
まっすぐと、嘘偽りない言葉であっても、彼女の心には響かない。
至極簡単に同意を返されれば、どうしようもない気分になって。
うれしいよ。
が僕らを好きだと言ってくれるのは。
それが僕らの向ける想いと同じものであれば、もっともっとうれしかったけれど。
。
不思議な子供。
突然現れた、この学校の居候。
魔法が使えないのに、この学校に存在できる子供。
そして薬学教授にひどくなつくおかしな子。
見た目は、ジニーより幼いのに。
年齢は僕らと同じくらい。
今、なおつたない言葉。
そのわりに思考回路は大人びて。
僕らを簡単に区別して、あっさりと名前を呼ぶ、
それがどんなに特別なことなのか、きっと彼女は気づいていない。
すきだよ、すき。
ほんのりと、胸が暖かくなって。
もっと一緒にいたいと、自分と共にいてほしいと。
ほかの誰にも渡したくないと。
そう思わせる存在。
「僕も、好きだよ」
ジョージの言葉にも、やっぱり笑って答えて。
賢い彼女だからこそ。
おそらく気づいている。
僕らの言葉が持つ真実に。
そして、僕らがそれに気づいてほしくないと、思っていることに。
先に進めないのならば、今のままの関係でいたい、と、そう願っていることに。
優しい彼女だからこそ、知らないふりをして笑って。
僕らにとてもきれいに笑ってくれる。
ああ、すきだよ。
すきだよ、。
でも、確かに今のこの兄のような、友人のような。
そんな関係だって愛しいんだ。
もしもあの人に愛想が尽きたなら、いつでもおいで。
もしもあの人がひどいことをしてきたならば、いつでも言って。
僕らはなにがあっても君をつきはなしはしない。
君を守ってあげるから。
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