ドリーム小説










魔法112






















「水中でも息ができる魔法ってないの・・・。」

歩いていれば聞こえてきた言葉。

そういえば、植物の一種でそんなものがあったなあ、と想いながらそちらを見れば、ハリーがいた。

「ありますよ。」

私の言葉にきょとん、としたハリーは、びっくりするくらいに勢いよく飛びついてきた。







一番大事なものが、奪われる。





それが第二の課題。

内容を聞いたとき、ぞくりと、した。

すぐそばにいた教授のローブを強く握る。


無言で見下ろしてくる教授。

目を合わせて、思わずつぶやいた。


「一番大事なものが奪われるなんて、それはひどく、怖いです。」


偏屈で、意地悪で、たまにすごく大人げない。

でも、私には優しくて、甘くて、とても強くて。



いつだって、あなたがいる世界だからこそ、輝いてみえる。


怖いよ

私の一番大事を奪われれば、きっとわたしは生きていけない。


怖いよ

私の一番大事なものはあなただから。




「一番大事なものが、うばわれてしまったら、私は生きていけません。」


私の言葉に対して教授はかすかなため息。

ああ、あきれられてしまったかな。

面倒だと思われてしまったかな。

怖くなって、握っていたローブから手を離す。

と、


「我輩はそんなに簡単に連れていかれはせん。」


小さな、本当に小さな声で。

述べられた言葉。



じわり、喜びが、あふれる。


私は一言も、あなたが一番だと告げてはいないのに。

それでも、あなたは簡単に言った。

私の一番大事なものがあなただと。


自覚してくれていることが、どうしようもなく、うれしい。


うれしさと同時にあがってきた熱をごまかすように、視線をうろつかせれば、歓声が響く。


そちらをみれば、セドリックが一番に陸上にあがってきたところで。

腕に抱えるのは黒髪の少女。

確か同じ東洋人の、女の子。

その次にハーマイオニーが、クラムに連れられて。

水に濡れた彼女もひどくきれいだ。

それから最後にハリーが。

その腕には二人を抱えて。

彼の親友であるロンと、きれいな女の子。

もう一人の代表選手がハリーに駆け寄っていく。


強く握っていた手を少しだけゆるめて。

教授をそっと見上げる。

そうすれば彼の瞳がかすかに和らいでいるのが見て取れて。

ふいに、思った

教授の一番は、誰だろうって。

そっと教授から視線を逸らして、もう一度セドリックを見る。

ふわり、セドリックの腕の中で幸せそうに笑う女の子。


だいすきなひとに、助けてもらえたうれしさは、私だって知っている。





教授の一番大事なもの。





私はその答えを持たないけれど。

私ではないことだけは、確か。


























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