ドリーム小説
魔法126
「ディゴリー君、いい加減君も飽きないの?」
「僕は、に助けられたから。今度はこの子が助けを求めたとき、僕が役に立てるようにできるだけそばにいたいんだ。そういう睦月も、いつもいるよね。」
薬学教授の部屋の中、そのクローゼットの奥。
そこが、の住まう部屋。
この場所で、彼女は今もこんこんと眠り続けていて。
俺とディゴリーはなぜかよく、二人でこの部屋にいる。
そのたびに交わす会話は取り留めのないもの。
だいたいはじめはこの言葉から。
そしてそこから会話は広がる。
このホグワーツに転入という形で無理矢理入り込んで、あと数ヶ月で一年だ。
まさかのハッフルパフに入ることになった俺。
スリザリンじゃないことに何度も帽子に確認をとった。
そしてこの学校で一番仲がいい相手はこのディゴリーだろう。
今だって、また取り留めのない会話で時間は過ぎていくのだから。
は目覚める。
いつ、とは言えないけれど、
それでも、必ず瞳を開くと、なぜか確信を持って言える。
俺がもつ未来を知る、その能力では、なぜかこの少女がみえない。
まるで存在し得ないかのように、彼女抜きの未来をみるのだ。
それでも、そういえるのは。
この薬学教授大好きっ子が、あの男をおいていくわけがないから。
夜も遅い。
そろそろ薬学教授の雷が落ちる頃だ。
仕方なしに立ち上がってディゴリーと共に部屋を出ようと足を踏み出した。
と、
ばちん
部屋に響いた音。
それは、姿現しの音。
ホグワーツの中では姿現しはできない。
それでも、何事にも例外はあるわけで。
その例外たる俺が、ここにいるのだから。
とっさに杖を手に持ち音の方向へ体を向ける。
横のディゴリーも同じように杖を構えていた。
どさり
時間差で現れたのは一人の男。
黒を基調とした服。
髪も黒。
その手には杖。
ぎらり、向けられた瞳は血走って、怒りにあふれて。
「っベラトリクス!!」
叫んだ名前は、確か帝王のそばを望む女のもの。
でも、何よりも、その顔に見覚えがあるわけで。
「・・・シリウス・ブラック!?」
ディゴリーがその名前を叫ぶ。
それもそうだろう。
だってこの男は凶悪犯罪者と言われていた相手。
数年前にそれが無実だと言う話がでたが、それも不確かな情報なわけで。
「誰だおまえは!」
ディゴリーの言葉に叫び返したブラックは杖を構えて___すぐさま動きを止めた。
「っ、ちがう、!!」
表情が赤から、青へ。
ゆるり、動いて。
そして未だに眠り続ける子供の名前を呼んだ。
「!」
振り向いて、眠る彼女を視界に入れて。
ふらふらとそちらへと足を進めるのを、俺とディゴリーとで止める。
「になんのようだ。」
「ブラックさん、突然現れた説明はなしですか?」
杖を向けてあっさりと武装解除をしてみせるけれど、ブラックはを見つめたまま動かず。
「___ここは、ホグワーツか?」
こちらに意識を向けぬまま、ブラックは問いかけてきた。
ちらり、ディゴリーと視線を交わして、ディゴリーが返事をする。
「だとしたら、どうなんですか。」
「・・・俺はたぶん、に救われ、た・・・?」
ぽつり、つぶやかれた言葉は部屋に落ちる。
「・・・何で疑問文。」
思わずこちらもつぶやき返せば、ゆるゆると男がこちらを向く。
「そ、うだ、ハリーは、ハリーたちはっ!」
は、っと何かに気がついたように瞳を開いて、男はポッターの名前を呼ぶ。
挙動不審にもほどがある。
ああ、そういえば、ポッターたちはどこかに入り込むと、見た気がする。
そう思いながら、気づく。
その未来では、この男は、ポッターをかばって、
息絶えていた、はずだった。
未来が、変化した。
それこそディゴリーの時と同じように。
そのきっかけは、きっと___
「貴様等、まだいるのか。時間をわかっているのか、ね・・・」
手を伸ばしてこちらの胸ぐらをつかんで情報を得ようとする男。
それを遮ったのは、新たに登場した男___。
「なぜ、貴様がここにいる、ブラック・・・!」
否、この部屋の本当の持ち主。
瞬時、構えられた薬学教授の杖は、ブラックの喉元へ。
さりげなく俺たちをかばうような位置にたって、薬学教授は絞り出すように声をあげる。
「もう一度、聞こう、」
すぐ横ディゴリーがかすかに声をあげた。
何事かとディゴリーの視線をたどれば、そこは眠る少女。
薬学教授はブラックに意識を全部持っていかれているようで、気づかない。
「なぜ、貴様がここに、」
少女の手がゆっくりと、何かをさまようように動き
「の部屋にい___」
「___せぶるすきょうじゅ」
確かに、人の、名前を呼んだ。
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