ドリーム小説
魔法129
「__せぶるすきょうじゅ」
その声を聞いた瞬間、すべてのことが頭から消えた。
その柔いからだを抱きしめて、その黒髪に指を沿わせる。
確かに感じる体温
瞬く瞳
焦ったように動く体を、逃がさないようにとさらに力を入れて。
ただただ強く抱きしめる
名前を呼ばれた瞬間、急速に世界に色が付いた。
遠くから眺めていたそれらが、自分のものになったかのように。
声がでない。
名前を呼ぶことすら怖くて
ただ、逃げないように、二度と離れていかないように、強く強く抱きしめる。
優先するのは、この子ではなくて。
ほかにもせねばならぬことは多いのに。
それでも、今は、この少女の温もりを感じずにはいられなくて。
体をなぞって、怪我がないか、以上がないかを確かめる。
結果、特に異常はなさそうで。
そっと、頬にふれたのは自分よりもずっと小さな手。
柔らかなその手が私の髪をかきあげて下からのぞき込んでくる。
かちあった瞳。
その表情は、ふにゃり、と喜びを表すかのように柔らかくなって。
ああ、愛しい
あふれる感情を堪えられる気がしなくて、そのままベッドの横に膝をつく。
いつもは見下ろすだけの彼女。
下から見上げるのは新鮮で。
そばにいる、そういったそばから離れたこと。
かすかに責めれば困ったように表情を変えて。
それでも、最終的にうれしそうに頬をゆるめるものだから、どうしようもない気持ちになって。
ぐ、っと頭が胸元に引き寄せられる。
それを受け入れて、抱きしめ返す。
もっと、と願うように力を増せば、答えるように強まる腕。
「大好き」
そんな言葉を、男と二人で密室にいるときに、吐くな馬鹿者。
堪えていた理性、というか、なんかいろんなものが、ぷっつり、切れた。
その白い肌に、首もとに、唇を寄せて。
ゆるり、その甘い香りがする肌に顔を埋め。
一度、二度、ゆるやかになめあげる。
上から響く声が、自分の行動に拍車をかけて。
一度強く吸えば、紅に染まる白い肌。
それに満足して、でも、まだ足りなくて。
彼女自体を引っ張った。
自分の膝の上にのせ、その温もりを全身で感じる。
「きょ、じゅ、」
先ほどからずっと戸惑ったような、でも、熱に浮かされた声色が響く。
けれど、名前で呼ばれないことがなんとなく引っかかって。
首から顎。
輪郭をなぞって、耳元で。
ゆるり、舌でなぞればふるえるからだ。
その体を押さえ込み、さらに深く、深く、進入するようにふれて。
「」
耳に流し込むように、名を、呼べば。
熱くふるえるからだが、私を誘う。
「名を呼べ」
「きょ、じゅ」
違う、そうじゃない。
そんな思いを込めて、再度その耳元をなぞれば、熱い音。
「せぶ、るす、」
それが、いい。
ゆっくりと、舌をはずして、
正面からを、見る。
赤く紅潮した頬に、潤む瞳。
吐息を漏らす唇に、どことなくぐったりとした体。
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「いい子だ、」
もっと呼んでほしいけれど、それよりも、その赤い色を、貪りたくて。
その小さな唇を、あわせるだけの口づけを落とした。
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