ドリーム小説
魔法130
「、助けてくれて、ありがとう。」
セドリックが、私の手を取って泣きそうに笑う。
「心配ばっかりかけて!」
ハーマイオニーが私にぎゅうぎゅうと抱きついて。
「またお話できてうれしい。」
ルーナが穏やかな笑みを私に向けて
「シリウスを助けてくれてありがとう。」
ハリーが、深く、深く頭を下げて。
愛する眠り姫へ、なんていうふざけた題名で、フレッドジョージから手紙が届いて。
「このバカっ」
ドラコがペシリと私の頭をたたいた。
「よかったな、ちゃん。・・・この世界には、ちゃんが目覚めて喜んでる人がたくさんいる。」
もちろん、俺もな。
睦月君が、くしゃり、頭をなでてそういった。
長い間眠っていたことは知っていたけれど、一年近く、とは思わなかった。
その間に世界はいろいろ動いていて___
でも、なぜか私はその世界を夢で見ていた。
これを教授に話したら、こわばった顔をして、そしてすぐに睦月君を連れてきた。
ちなみに、教授を見ると、今も顔が赤くなる。
ハーマイオニーたちに心配されたけれど、なんでもない、とかえすしかなくて。
「本当にちゃんが無事目覚めてよかったよ〜」
にこにこと、以前よりもずっと親しみやすい笑みになった睦月君は言う。
「心配かけたみたいで・・・すみません」
「うんそうだね〜。まあ一番心配してたのは、先、いた、ちょ、先生痛い!!」
睦月君の言葉を遮るように、教授がべしり、持っていた本で睦月君の頭を攻撃した。
「まったく・・・」
ぶつぶつ言いながらも睦月君は私へとゆっくりと手をのばした。
「・・・ああ、やっぱり。」
私に手をかざして、真剣な瞳を浮かべていた彼は、ぽつり、言葉を落として。
「ちゃんの中には、いろんな魔法の力が沈んでる。一番強いのは、ヴォルの力かな。」
そんな意味の分からないことをのたまった。
__睦月君曰く、私は魔法が使えないのではなく、使える魔力を持っていないだけ、らしい。
魔法を使う素質はあるけれど、魔法を使うための力はない。
つまり電気がたりない電気自動車だそうだ。
そして、魔法が効かないと言うよりも、魔法を吸収しているだけなのだとも彼は言った。
与えられる魔法の力を貪欲に求めるこの体は、攻撃だろうとなんだろうと、あっさり自分の力に変えてしまうのだと。
けれど、所詮それは人の力。
手にはいりはするけれど、その人物の特長をも受け継いだ力。
と、いうことで、今まで身に受けた魔法の力がそれぞれの持ち主を夢に見せた、らしい。
「俺はヴォルと同じか、下手したらそれ以上の力を持ってる。それと同じでちゃん。君は、どんな魔法でもその身に宿すことができる力をもってるんだよ。」
こんがらがってあまりうまく理解はできなかったけれど、一つだけわかったことがある。
「・・・私は、魔法が使える?」
皆みたいに、きらきら、光る魔法が。
ちらり、教授を見れば、ため息をついて、でもうなずいてくれて。
この人を、守る力が、ある?
「いえーす。さらにいえば、その体にやっぱり魔法は効かない。」
だけど、睦月君は笑みを深めていった。
「でも、ちゃん。魔法が使えることは、秘密にしておくことをお勧めするよ。」
「我輩も睦月と同じ考えだ。」
固まった私に言葉を続けたのは教授。
どうして?
聞く前に、返事はやんわりと返ってきた。
「魔法が効かない、魔法が使えない、は驚異じゃないけど」
「魔法が効かないが、魔法が使える人物は、我々、強いては帝王には大いなる驚異だ。」
淡々と続けられる言葉。
せっかくこの人を救うことができるかもしれないその力を、持て余すことしかできないなんて。
ゆるり、視線が落ちる。
けれど、私の頭に柔らかな温もりが乗る。
「しかし、使いこなせないのは問題だ。__あいている時間に魔法について教えよう。」
教授が
「俺もちゃんになら教えてあげるよ。」
睦月君が
そういってくれたから。
小さくでも笑うことができた。
「それから__」
突然の日本語。
「知ってるでしょ?俺のもう一つの力。」
_未来を知ることができる力_
脳裏に浮かんだ言葉にうなずく。
そうすれば、よくできました、とばかりに頭をなでられて。
距離をつめられて、耳元で、言葉が、響いた。
「君の一番大事な人を救うために、魔法が使えないふりをしているといいことがあるかもしれないね。」
未来への布石
二人で眉間にしわを寄せる教授を見て、へらり、笑って見せた。
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