ドリーム小説
魔法152
新学期が始まって一ヶ月。
不器用なあの男は、あの子を屋敷に閉じこめたまま。
迎えに行くことはなかった。
そのとばっちりとばかりに、俺はあの子の友人たちの不満を受け止め続けている。
「昴!」
ふわふわの髪をなびかせて俺の名前を呼びながら走ってくるのは、獅子寮の才女。
その後ろにポッターとロンもいるわけで。
「どした?ハーマイオニー。」
何にも気がついてない、そんな風を装って訪ねれば、彼女は勢いをそがれたように口ごもる。
「あの、は、まだ・・・?」
彼女の口からでた疑問は、予想と違わず。
そしてそれに対して俺ができる答えも限られているわけで。
「うん、まだブラック家にて療養中かな〜。」
薬学教授が迎えに行かない、なんて事実、伝えればこの三人は怒り出すに決まっているから。
体調崩してブラック家にとどまっている、とでっち上げてみた。
思った以上に純粋に信じられて、逆にこっちが申し訳ない気分だ。
ほかにもあの子を心配して寄ってくる生徒には同じ理由を伝えている。
・・・たった一人をのぞいて。
「昴」
獅子寮の三人組を見送っていれば、はかったように呼ばれた名前。
声からわかっていた相手にむきなおり、へらり、笑えば相手は少し困ったようにためいきをつく。
「・・・教授の判断は正しい。」
ぽつり、落とされた言葉。
唯一事実を伝えた相手は、教授の行動に是を唱えた。
それでも、声に表情に覇気がないのは、寂しいと感じているからだろう。
素直なその姿に笑いがこぼれる。
手を伸ばしてそのプラチナブロンドをくしゃり、なでる。
そうすれば嫌そうにしながらもこの少年は逃げないと知っているから。
「大丈夫」
俺の言葉に不思議そうにこちらを見てくる。
「どうせあの子が耐えられなくなって、会いに来るから」
そう伝えれば、一瞬少年の瞳は輝いて。
でもすぐに罰が悪そうに視線をさまよわせた。
「会えるのは、嬉しい。が___」
俺の手をそっとはずして、まっすぐに俺をみて。
「危険な目には遭ってほしくはない。」
あの子が、この少年を気に入る理由がとてもよくわかった。
俺だって、この子にあまり危険なことをしてほしくはないわけで。
「なあ、ドラコ。」
ドラコは、俺を見ながら首を傾けた。
俺は、この世界での俺は、あの子の、ちゃんのものだから。
優しい君に、酷な試練をかそうじゃないか。
あの子を、少しでも危険から遠ざけるために。
君経由で、あの子が脅かされないように。
「ちゃんは、君に対して同じことを思っているよ。だから、」
だからこそ、君は学ぶべきだ。
「君に閉心術を教えるよ。」
心を閉ざすすべを
君によって、大事な人たちが傷つかずにすむように
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