ドリーム小説










魔法153





















彼女のことを想うなれば、遠ざけるべきなのだ。

それでも、側に置かねば守れない、とも感じていて。

彼女にとってよいのは、どちらか。


それは、言われなくてもわかっていた。


そして選んだ先は、今現在一番安全で、同時に一番嫌いな奴がいるところ。


知られることのない、守りのかけられた場所。


休みの間、見に行く度、彼女はうれしそうに笑って。

帰ろうとする度、寂しそうに見送ってくれた。


はじめにあったときに比べて女性らしさを増した体。

私を写してうれしそうに細まる瞳。

想いを伝えるように呼ぶ声は、甘やかに私を浸食する。


愛しい、と。


そう感じることに、もはや抵抗はなく。

それ故に、共にあることは許されないと知った。





「スネイプせんせー。」

呼ばれたことで、意識が現実に向く。

ゆっくりとそちらを見れば、いつのまに部屋にはいってきたのか睦月の姿。

ソファに腰掛けひらひらと手を振り、顔には笑みを張り付けて。

「どうせちゃんのことでも考えてたんでしょ?」

「・・・何をしにきた。」

言い当てられた正解。

否定も肯定もせず、促すのはこの部屋にきた理由。

「いつになったらちゃんを迎えに行くのかなーって。」

にこにこと笑顔を絶やさぬままで、男は答えた。

その答えは、自分でも見つかっていない。

無言を貫けば、笑顔は早々にあきれたものに変わって。

「遠くにおいていて心配ならば、さっさと手元に戻しちゃえばいいんじゃないですか?」

正論を背に、止まっていた作業を再開させる。

たとえ闇の魔術に対する防衛術の教鞭を執ることになっても、魔法薬学の調合は定期的に行っていて。

今も、その準備の最中だったのだ。

少々脱線してはいたけれど。


「側に置くことで守れることは多いと思いますけど。」


答えずにいる私を非難するでもなく、ただ淡々と自分の意見を述べるように。

「まあ、俺はちゃんが悲しまなければ何でもいいんですけどね。」

ぽつり、落とされたのは、本当の彼の本心、なのだろう。




「スネイプ!!!」



突如響いた声。

それは、この場所では聞くはずのなかった大嫌いな奴のもの。

突然すぎるそれに、腰にあった杖を取り出し、声の方向へ向ける。

ソファに座っていた睦月も同じように杖を構えていて。




構えた先、そこにあったのは、


大嫌いな奴と、




愛しい、彼女の姿。





動かないその姿は、過去を彷彿させた。
























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