ドリーム小説










魔法154
























ちゃんを、手元に置くのを迷う姿。

それはひどく人間らしい悩みだと思う。

迎えにいこうと何度も立ち上がり、そのたびに刻まれた呪いが足かせとなる。

手紙の一つでも書けばあの子は笑顔になるのに、書く言葉を見つけられず。

とてつもなく不器用な男。


それも、最後の最後、本当にその時までこの男は不器用で。


知っているそれを、変えられるかもしれない期待と。

変えたときに起こるかもしれない弊害。

それにおそれて何もできない俺を、あの子はあっさりとしてみせる。


なればこそ、俺はあの子を大事に想うわけで。


さて、では、今回はいったいどういう状態なのだろうか。


シリウスがつれてきたのは紛れもなくちゃん。

ただぐったりと横たわり、顔色は最悪。

かすかな呼吸だけが生を証明する。


シリウスが先生を責める言葉をはく。

だがこれは監督不行き届き、というものではないのだろうか。


「・・・、なあそれって。」


共につれてこられた僕妖精。

それが手にしているものに、覚えがあった。

だって、それは、あいつが閉じこめた魂のひとかけら。


「まぁた、ちゃんやっかいなのに巻き込まれたね」


壊れかけたロケット。

それは、俺の視た世界であれば、偉大なる魔法使いによって壊されるはずのもの。

でも、倒れているのはちゃん。

導き出される答えは、一つ。


向けられる大人二人の視線は無視して。


「先生、校長を呼んでほしいんだけど。」


要望を口にする。

そうすれば、先生はうろんげな顔をしながらも従ってくれるわけで。



あっという間に訪れた最高権力者の前に、ロケットをかざす。


「これ、分霊箱、でしょ?」


驚きで目を開く校長に笑って問えば一つ、うなずかれて。


「なぜここに?」


校長の問いかけに、俺は答えを持たないから笑って僕を見る。

しかしながら主以外の命に従わないそれは答えるのをいやがって。

「クリーチャー、話せ。」


それでも、今の主の命には逆らうことはできずに。






















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