ドリーム小説










魔法166

















日に日に、ドラコはやつれていっていた。

私を見て嬉しそうに笑いはするけれど、それでも、それだけで。

ハリーたちとも距離をとってるみたいで。

どうしたの、と聞いても、ドラコはなにも聞かないでほしい、と返す。

それでもそばにいてくれると嬉しいと、そう告げるから。

だからこそ、できるだけそばにいた。

腕に刻まれた痕に、気がつかないふりをして___





「ミスは許されないぞドラコ。」




聞こえてきたのは大好きなベルベットボイス。

でも、内容は、ひどく現実から遠いもののように思えて。

両手で口をふさいで、息を潜めて。

その場にじっと座り込む。

スラグ先生がパーティを開く。

それに呼ばれて嫌そうにでていった教授。

暇をもてあまして繰り出した夜の城内。


そこで遭遇したのは、愛しい教授が私の友人に向ける厳しい視線。


内容は、とても抽象的なもの。

それでもドラコが教授に対して何らかの不信感を抱いていることは理解して。

でていくこともできずに、二人の声をただぼおっと聞くことしかできない。


なんとなく、わかっていた。


睦月君が、ドラコに閉心術を教えていることから。

レギュラスが、いろんな魔法をドラコに伝えていることから。

今のドラコの立ち位置が、危ないところにあるのだと。


以前聞いたこと。

彼の家は、純血で。

両親は帝王に屈しているのだと。

腕に刻まれた痕は、帝王に従するものの印だと。


そして、それは、ハリーたちとは違える未来なのだと。


いつだって、強くあろうとするドラコ。

その姿勢は格好良くて。

まっすぐと前を見据える瞳はきれいで。

私の名前を呼んでくれるドラコは、優しくて。


けれど、彼はいずれ自分も腕に痕を刻むのだと、言った。

こまったように、どうしようもなさそうに。

でもどことなく誇らしげに。


それこそ、家族が一番大事だと、そう告げたときと同じ顔で。





ドラコは、教授の手助けを拒んでいる。

差し出された手を振り払って。

威嚇する猫のように、牙を見せて。

対する教授も、不器用な人だから。

ドラコにかける優しい言葉を思いつくことはなく。

彼の心に住まう愛しい人のために、それ以外の犠牲なんか、気にしないまま。



人を信じたりはしない。

たった一つ目指す未来のために。


ほかのなにを犠牲にしても。


___たとえ私が犠牲になっても。


ああ、それでも

それでも。私は教授しか信じられないのだけれど。




去っていくドラコを見送って。

その場に立ち尽くす教授の横へ。

私がいることはわかっていたのだろう。

ちらり、一度だけ目線を向けられたけれど、それはすぐにドラコの背へ。


「ドラコは、いい子ですね。」

いい意味でも、悪い意味でも。

私の言葉に教授は答えることはなく。

「戻るぞ。」

ローブが私を包み込む。

大好きなにおいに包まれて、教授にあわせて足を進めた。




だから私は気がつけなかった。



私を見ていた少年のことを。
















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