ドリーム小説
魔法168
昴が僕と先輩を連れて行った先は、とあるトイレ。
その中にはぼろぼろと涙を落とすドラコとそれを抱きしめるポッターの姿があって。
そしてそれを眺めるがいて。
「何事だ。」
状況を把握できない僕の思いを代行するように、先輩は声を発した。
その声に二人は大げさに体をふるわして、こちらを見てとてつもなく気まずそうな顔をして。
「スネイプ教授・・・」
怯えるような、おそれるような声色。
発したのはドラコ。
ポッターはその音を聞いて、ドラコを守るように一歩前へ。
ああ、なんだ。
ちゃんとこいつらは、友人として互いを思い合っているじゃないか。
僕と同じ純血の家に生まれて、家を繁栄させることを求められて。
でも、この子は僕とは違った。
僕とは違い、純血以外のつきあい方を、知っている。
それは、おそらく___
ちらり、向けた視線の先。
満足そうに笑う。
きっとこの子がもたらした。
視線を感じたのか、が僕を見て、そして、鮮やかに笑ってみせるから。
本当にかなわないと思う。
「見事にぼろぼろになったなー。」
空気を読むことを拒否したように、あっけらかんと告げるのは昴。
その言葉通り、ガラスや破片が飛び交うこの場所は生々しく戦闘の痕を示していて。
無言で杖をふって、修復の魔法を使う。
「・・・帰るぞ、」
見つめあっていたポッターたち二人と先輩。
先に目をそらしたのは先輩の方で。
ため息をはいた先輩はの手をつかんだ。
「はい、教授。」
は、笑う。
本当に幸せだとでも言うように。
鮮やかに、艶やかに。
対する先輩の表情も彼女を前にすれば、ゆるむわけで。
あっさりと二人はこの場所から遠ざかっていった。
「___さて、じゃあ本題に入ろうか」
発したのは昴。
先ほどまでのからからとした口調は消えて、真剣なものへと変化して。
まっすぐに昴は二人を見据えて口を開いた。
「ドラコ。おまえには今俺が閉心術を教えている。」
昴の言葉にドラコはゆっくりとうなずいて。
「ポッター。おまえも閉心術をマスターしろ。」
今度は僕が、ポッターに向けて言葉を紡ぐ。
困ったように眉をひそめたポッターにさらに言葉を畳みかける。
「僕はおまえはどうでもいい。だがな、ドラコに関しては違う。この子はある意味、おまえよりも危ないところにいるんだ。」
帝王の膝元に存在しざるを得なくなった、この子。
一つのミスが、生死に関わる。
「そして今、精一杯こばんだドラコを、おまえはつかんだんだ。」
ドラコの優しさを、想いを、あっさりおまえは突き放したんだ。
「ならば、ドラコを守る責任を持て。」
その意志にふさわしい誠意を見せろ。
「おまえからドラコの存在がばれることがあれば、ドラコはその瞬間命を落とす。それを忘れるな。」
こわばった顔で、それでも確かにポッターはうなずいた。
血の気のないドラコに昴が近寄り頭をなでる。
「大丈夫だ。俺たちはおまえが思っているよりもずっとたくさんの修羅場をくぐり抜けてきたからな。」
昴の言葉に、ドラコがかすかに頬をゆるめた。
「そんな俺たちが教えるんだ。大船に乗った気分でいろ。」
「ちょ、昴!痛い!」
頭をなでていた手が、乱暴にドラコの髪の毛をかきまぜた。
悲鳴を上げたドラコをからかうように昴はさらにぐしゃぐしゃにして。
「ポッター」
それをかすかに笑って眺めるポッターを呼ぶ。
こちらを見たその瞳は、確かに先輩が焦がれていたエヴァンスのもので。
僕を見るとこわばる表情。
あの、ジェームズポッターとは似ても似つかない穏やかさ
「ハリー。よろしく頼むよ。」
僕の言葉にハリーはぎこちなく、それでも笑った。
闇の陣営に身をおいていた僕らだからこそできる手段で。
この二人に持ちうる限りの知識を。
互いを思いやる優しい気持ちを忘れぬよう。
それを、悪用されぬように。
明るくない未来に抵抗するため。
僕らのすべてを授けよう
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