ドリーム小説










魔法171



















みんなみんな大事なの。

でも、私の手はとても小さいから。

できることなんか、たかがしれているから。



だから、あの人以外、いらない、の___



今までみたいに、笑いあえる世界はもう終わるって、知ってしまったから

だから、あの人以外、いらない、の




一番、以外は___





愛しい人のそば。

柔らかなぬくもり。

このまま、一人幸せにまどろむことなんかできないって、わかってた。

それでも、友を、なにを犠牲にしてでも、この私の小さな世界が続けばいいって。


そう思わずにはいられなかった




「っ、ぐっ」

それは、突然のこと。

何の前触れもなく、教授が腕を押さえてうずくまった。

それこそ、痛みをこらえるように、歯を食いしばって。

「教授!」

触れるな、以前にそういわれたことはあったけれど、ほおっておけるわけもなくて。

思わず手を、のばした。



教授をつかんだはずの腕は、逆につかまれて。

引き寄せるはずだった体は、あなたに引き寄せられて。

堅い胸板に顔を押しつけられた。

沸き上がる喜びと困惑と。

消化しきれない感情を抱えて、その胸に顔を寄せる。

と、

「セブルス!!」

突然開かれた扉と、キーキーとした声。

フリットウィック先生が動揺を露わに飛び込んできて。

けれど間髪入れず、その声は聞こえなくなる。

原因は間違いなく耳元、教授の口から放たれた言葉。

失神の呪文。


人を傷つける呪文。


部屋に満ちるのは沈黙。

ぐ、っと痛いほどの腕。

それにあらがうことはなく体を預けて。

「教授」

「教授」

「教授」

私の声は、あなたに届くのだろうか。

何の反応も返らない。

それでも、呼ぶことしかできなくて。


「セブルス、さん」


いつしか特別なときにだけ呼ぶようになった呼称。

それに反応するかのように腕の力は強まって。

そして、ぐ、っと体を引き離された。

至近距離。

見上げた顔。

無表情とも呼べる表情は、それでも瞳に葛藤が見えて。



あなたに呼ばれるだけで、私の世界は色が付く。

「はい、セブルスさん。」

優しく頭をなでられて、そっと目元を隠されて。

その穏やかな香りに包まれて。


そして、悟る。

やっぱりこの人は私をおいていくのだと。



「セブ__」


再び教授を呼ぼうと開いた口は、あっさりと何かにふさがれて。

ぬるくしっとりとした感覚。

言葉を飲み込むどころか、すべてを搾り取るかのように。

彼の言葉にならない何かが、すべてそそぎ込まれるように。

呼吸の間すらも惜しいというように、何度も重ねられるそれ。

回を増すことに呼吸は荒くなり、それは、かみつくように変わる。

口の中を蹂躙する生ぬるいそれ。

余すことなく味わうように続けられて。

強引に進められる行為だというのに決して嫌悪感を感じることはなく。

ゆっくりと触れていた唇が離れた。


「しばらくさよならだ。」


呼吸を乱す私と対照的に余裕さえ浮かべて、教授は笑った。

ぺたりその場に倒れこんだ私をそのままに、音を立てて教授は部屋を出ていった。

「ず、るい・・・」

今まであんなふうにキスしてくれることなんてなかったのに、こんなときに、こういうときに限って。


赤くなる顔。

力のはいらないからだ。


目の前に倒れたままの先生すら気にならない。

頭の奥、ぼおっとしびれる感覚を受け入れていれば、駆け込んできた女の子たち。

ルーナと、ハーマイオニーと。

二人は部屋に入ってきて、先生と私をみて驚いた顔をした。




甘い甘い



その唇に酔いしれた































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