ドリーム小説
魔法173
どれほどたったのか。
校内はひどく騒がしく。
その原因であろう場所に向かえば、そこは校庭で。
学校従の人々の姿があった。
彼らは一様に、何かを囲んでいて。
ゆっくりと、音を立てながらそこへ近づく。
私の姿を目にした生徒は一歩、また一歩と私から距離をとって。
そのおかげで前に進むことが、できた。
どくん
どくん
異様に早くなる心臓。
大丈夫、大丈夫。
彼じゃあない。
囲いを抜けた先。
そこにあったのは、この学校に受け入れてくれたひとのすがた
「・・・こう、ち、ょう・・・?」
__ああ、教授じゃなくてよかった。__
かすかに自分の広角があがった気がした。
ゆっくりとそのそばに跪いていた一人が顔を上げた。
目は虚ろで、その顔には生気がない。
でも間違いなく知っている顔で。
「・・・は、りー」
そっとその名を呟く。
周りからはすすり泣く声。
いくら私でも状況は、わかるわ。
「校長は、死んだのね」
そう呟けばハリーの瞳が暗く、よどんだ。
「殺したのは、スネイプだ」
「・・・そう」
なんとなく、わかっていた。
そうなんじゃないかと。
彼の、未来のその世界のためには、これは避けて通れないことなのだと。
「・・・、なんでそんなに落ち着いてるの?」
ゆらり、立ちあがったハリーが私をするどく睨みつけてきた。
私はそれを静かに見返すだけで。
「・・・知って、いたの?」
尋ねる声。
それに対する答えを、私は持たない。
ゆらり、ハリーの手が、私にのびる。
「ねえ、」
緑の瞳が、私を写す。
「答えてよ、」
伸びた手は、私の首に、かけられて___
ばちん
軽い音を立ててハリーの手はたたき落とされた。
ゆっくりと視線を動かせば、すぐ横にレギュラスの姿。
「落ち着けハリー」
その奥から睦月君が顔を出して。
「ちゃんこそが混乱しているに決まってるだろう?」
いつものへらりとした顔ではない。
まっすぐと、強い意志を秘めた表情で。
レギュラスが慰めるように、私をなでた。
「二人ともスネイプの肩を持つの?」
ハリーの絶望に満ちた声。
それに対して二人は答えない。
「そいつのせいでダンブルドアが殺されたのに?僕の母さんも、父さんも、みんな殺されたのに?!ドラコだって、あいつにだまされているに決まっているのに!!」
ドラコの名前に、レギュラスはかすかに反応を示した
さまよった視線。
それに追い打ちをかけるようにハリーが、叫んだ。
「スネイプが死ねばよかったんだ!!!」
からだじゅうのちがなくなったかんかくがした
せかいからおとがきえた
どうしようもないこれは、いかりで、
「___」
ぱん
その場に響いた音。
それは私の手で、ハリーの頬で。
「っ、なに、」
ああ、頬がぬれている感覚がする。
これは、涙だ。
「!」
副校長の声も、どうでもいい。
「教授のところにいく。」
全部、全部、どうでもいいわ
「この世界で私が頼れるのはあの人だけ。」
「あの人は私を認めてくれた。」
「あの人はいつも私を守ってくれた。」
「私のすべてはあの人とともにあるの。」
「あのひとがいないこのせかいなど、何の関心ももてない」
「あの人がいれば、私の世界に返れなくてもかまわない。」
「わたしからあのひとをとらないで」
私の世界を奪わないで
進もうと足を踏み出した瞬間、目を隠された。
教授とは違う香りが私を包んで。
「大丈夫、あの人は戻ってくるから」
耳元でささやき声。
「ちゃんだけは、あの悲しい人を、信じてあげて。」
意識はするりと、闇に墜ちた。
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