ドリーム小説










魔法177

















「教授」


帰ってきた教授はいつも以上にぼろぼろで。

その顔には全く血の気がない。

あわてて駆け寄って、支えようとすれば、それよりも先に強く抱きしめられた。

「・・・セブルスさん」

優しく、落ち着くように、とその背をなでる。

そうすればこわばっていた体は次第にゆるんでいく。


「双子の片方を傷つけた。」


ぽつり、つぶやかれた言葉。

かすれた声には虚無感が潜む。

双子、は、きっと、あの赤毛の二人。

私の友人であり、この人の教え子。

笑う二人の姿が脳裏に浮かんで、小さくからだがふるえた。

こわばった私をなだめるように、今度は彼が私をなでて。


「大丈夫だ、生きている」


その返事にただ安堵の息をもらす。

まだ、この世界に存在し続けているならば、大丈夫。

「ハリーは?」

この人が守ると決めたあの子は、生きているのか。

「無事に隠れ家に入ったはずだ。」

その返事にも息を吐いて。

「睦月と、それからあれはおそらくディゴリーもいた。」

ハリーに化けて、敵の目を攪乱しながら逃げたのだと。

二人一組で、我らを惑わしたのだと。

教授は疲れた様子ながらも話を続けてくれて。


「大丈夫だ。今回は誰一人、死んではいない、はずだから。」


本当に優しいこの人。

歯を食いしばって告げられた言葉。

傷ついてほしくなんか、ないのに。

それは決してかなわない。


「・・・フレッドと、ジョージが手紙をくれたんです」

大切な人の温もりを感じながら告げるのは数日前に届いた手紙。

私の肩に顔を埋めて、言葉を噤む愛しい人。

「二人のお兄さんが、ビルが、フラーと結婚するって」

赤毛のよく似た二人が私に当てて書いてくれた言葉。

それは幸せをたくさん詰め込んだ報告

「それから、いろんな近況報告も」

日々の生活とか、最近のブームとか。

いつもと変わらない彼らの楽しい言葉がそこにはたくさん綴られていて。


「僕たちは、毎日を楽しんで生きてるよ、って」


その言葉で手紙は締めくくられていた。

悲愴感にあふれた内容じゃなくて、今を精一杯生きていると告げるように。


だから、大丈夫。


「あの双子が簡単にこの世界から消えるなんて、ありえないですよ。」



だから、教授は堂々と、顔向けできない任務を続けてください。



つぶやけば、教授は小さく笑い返してくれた。

















back/ next
戻る