ドリーム小説










魔法179









「分霊箱を探すんだ。」

ハリーはそういった。

けれど、それに対するヒントはほぼ皆無。

わかっているのは、彼の分霊箱であったロケットは壊れているということ。

分霊箱を破壊するにはふつうの魔法では効果がない、ということ。




見張りとして外に立つ俺の後ろには一つのテント。

中では三人が捜し物の在処について議論を交わしていた。

吹きすさぶ風に耐えきれなくなって、手元に小さな炎を出して暖をとる。

もうすっかり、冬だ。

はじめはシリウスの家を拠点にして行動していた。

けれどシリウスがいつ帰ってくるかわからないうえに、見つかれば絶対についてくるであろう彼を撒くのは容易ではないことから、今は毎日様々な場所を転々とするようになって。


そして今、とある森にてキャンプ中である。

ああ、暖かいものが食べたい。

ご飯に味噌汁、肉じゃが。

思い浮かべる故郷の料理。

それを、あの子と、こいつらと、一緒に食べれたらそれはひどく幸せなんだろう。

ああ、でもホグワーツの料理でもいい。

未だに舌になじんでいるとはいいがたいかけれど、それでも、懐かしいと感じるその味。

ホグワーツのご飯ですら懐かしいと思う日が来るとは思わなかった。

ゆるり、ゆるり、思考を浮かばせて。

考える取り留めのないこと。


けれどそれを遮ったのは激しい物音だった。


ガシャン


何かがひっくり返るような音。

ついで怒鳴り声。

さてさて、なにが起こったのか。


「僕たちは!君が何かを知っていると、思ってた!!」


テントの中をのぞき込めばたちまち声が大きくなる。

叫んでいるのはロン。

立ちすくむハーマイオニー。

ハリーも険悪な雰囲気を醸し出していて。


「何かダンブルドアから大きなヒントをもらっているんだって!!」


進まない宝探し。

不満を抱いていたのは誰もが同じ。

否、ハリーに関しては不安、か。


言い合う彼らを見つめていれば、ハーマイオニーがこちらをみた。

止めてほしい、とありありと告げる瞳に小さく笑って、首を振った。

無理。

それに対して彼女は頬を膨らませて俺から目をそらした。



結果的に、彼らは決裂した。

彼ら、というかハリーとロン、か。

ロンがテントをでていき、ハリーはそっぽを向いて。

どうすることもできないハーマイオニーがたたずんで。


それを俺は眺めていて。


「俺が言ってもなにも変わらなかったよ。」

無言で攻めてくるハーマイオニーにいいわけを並べ立てる。

けれど俺の言葉に彼女の視線はきつくなる。。


だって、俺は二人の、三人の友情の中にはいれはしないんだ。

それがわかっているのに、するほどバカじゃない


「___言っとくけど、」

沈んだ表情で、声で、ハーマイオニーは言葉を紡いだ。


「私たち、昴のこと大事な友人だと思ってるのよ?」


まるで俺の心を呼んだかのようなそれに、心臓が音を立てた。


「あのときだって、あなたの言葉だったら、ロンは、ハリーは聞いたわ。」

まっすぐにかすかに塗れた瞳が俺をみる。

「バカにしないで。」

まっすぐすぎる言葉が胸にしみた。

「あなたがわかってくれるまで何回だって言うわ。」

声がするりと俺に届く。

「あなたは大事な友達よ。」

続く言葉に目を見張る

「もちろん、だって。」

あの少女を、友だと認めたままでいてくれるとは思わなくて。

「だって、あの子は教授がいないと生きていけない子だもの。」

_教授以外、いらない_


「あの言葉は本当だけど、」


あのこの心そのものではないでしょう?















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